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地震や原発に対する高校生の意識を調査するため、お茶の水女子大学附属高校(東京)の1,2年生222人とふたば未来学園高校(福島県双葉町)の40人を対象に、紙面でのアンケート調査を行い、回答結果とそこから考えうる、地震や原発に対する意識の地域差を分析しました。
[Q1]
震度3以上の地震が発生した時にあなたが最も不安に思うことはなんですか。(基本は1つ選択だが、複数選んでいる人はすべてカウントしている。)
[結果]
[その他]
東京:自分の安全(4)・川の氾濫(3)・場所による(2)・物が落ちてくること(2)・火事(2)・土砂崩れ・ガス・逃げられるか・逃げ場がなくなってしまうこと・食料・火事・インターネット・学校の机の上・避難所生活
福島:震度がどのくらいか・スマホが使えるか・次の日に学校があるかどうか・インフラ(各1名ずつ)
[分析]
「東京と福島であまり大きな違いは見られない」
・どちらも「家族の安否」が最も多い
・福島のほうが「津波」がやや多い
・東京のほうが「建物の崩壊」「帰宅できるか」がやや多い
→どこにおいても、家族(自分含む)は生きていくうえでの最大の拠り所であり、必要不可欠だと 認識されているようです。また、自分で生計を立てられない高校生だからこそ、この傾向が顕著なのかもしれません。福島県双葉町は海に近いため「津波」、東京は建物が多く、電車で遠くから通っている生徒も多いため「崩壊」「帰宅」が多く挙げられたと考えられます。また、これは実際に東日本大震災のとき、東北で発生した津波、東京で発生した帰宅困難やそれらに基づいた災害教育にも影響されているのではないでしょうか。
[Q2]
普段の生活で地震に対して備えていることはありますか。
[結果]
[分析]
・備えをしていない人が思いのほか多い
・福島のほうが備えている割合が低い
・東京のほうが備えている割合が高い
→東日本大震災でより大きな被害を受けた福島のほうが、東京より災害への備えをしていないことが意外でした。しかしこれは、東京のサンプルが、SGHの授業や社会科、その他さまざまな場面で、防災の教育を受けているお茶の水女子大学附属高校だったことや、アンケートの規模が小さいことによるものと思います。また、東京のほうが、未知の震災に対する恐怖が大きく、手元にある物資も限られているからかもしれません。全体的に見て、備えをしていない人が多いことは、危機感と災害を「自分ごと」としてとらえる意識の欠如ととらえられ、これは強化しなければならない課題です。
[Q3]
Q2で「ある」と答えた人に伺います。その対策は、具体的にはどのようなことですか。(複数回答可)
[結果]
[その他]
東京:倒れそうな家具の固定(7)・非常食(3)・水の備蓄(3)・つっぱり棒・飛散防止フィルム・常に少し多めにお金を持っておく・食料だけでなく生理用品などの日用品のストックしておく・通り道をふさがないような家具の配置・枕元に上履きを置く・懐中電灯、マッチ、ろうそく・避難場所・個人情報を書いた笛を持っている・体力づくり
福島:懐中電灯を玄関に置いておく(1)・家具の固定(1)・親戚や近所の方の避難誘導(1)
[分析]
・全体的に「ハザードマップの確認」が少ない
・福島のほうが「家族での話し合い」が多い
・東京のほうが「非常用持出袋常備」が多い
→個人や家庭での備えはしますが、地域から発信される情報にはあまり興味を持っていません。東京は、家族でのコミュニケーションが希薄で、物質的な準備が中心。福島はその逆の傾向が見られます。いろいろな対策を組み合わせていく必要があると私たちは考えます。
【原子力発電に関する質問】
[Q1]
原子力発電についてあなたはどんなイメージを持っていますか。(複数回答可)
[その他]
東京:特になし(2)・福島(2)・効率が良い(2)・発電力が高い・大量発電・設置場所をどうするのか・除去しにくい・フランス・事故があると危険。しっかりした対策が必要
福島:わからない・特にない(各1名ずつ)
[分析]
「東京と福島に決定的違いはない」
→「放射性物質」「危険イメージ」という悪イメージが先行しています。CO2を出さないというイメージはあるものの「すべて完全」という印象の「クリーンエネルギー」に投じられた票は少なくなったと考えられます。
[Q2]
あなたは自分の住んでいる国が原子力エネルギーを使うことについて賛成しますか。
[結果]
[分析]
賛否が二分しており、賛成派にも、妥協したような回答が多くみられました。賛成の理由の主な内訳は、@原子力発電のメリットに着目して A(主に火力発電と比較して)原子力を使わざるを得ない B「安全確保」の条件付きなら のように大別できるように感じました。福島のほうが賛成の割合がやや多いのが意外でしたが、事故前まで原発による経済効果などの恩恵を受けていたことや近くで原発の現実を見ていることが影響しているのではないかと感じました。また、身内が原子力発電関連の仕事に従事しており、生活に必要であるという状況も考えることができます。これだけ様々な意見があることが国政で問われているため、正しい知識を身に着けて自分意見を持ち、主張することが重要だと思いました。
[Q3]
東京で使用する電気を福島の原子力発電所で作っていたことに対して何か思うことはありますか。
[結果]
東京
・無回答
・申し訳ない
・おかしいと思う
・福島に責任を押し付けていることに疑問を感じる
福島
・理不尽なことだと思う
・福島に風評被害が残ったり、東京の人から偏見をもってみられるのはおかしい
・むやみに嫌悪しないでほしい。現状を知ったうえで判断してほしい。
・事故が起きることを考えてほしかった。
・地域を超えて電気を供給できることは素晴らしいと思う。
・仕方がないので悪とは言えない。
・賠償金を払っていただいたので文句はない
[分析]
東京では、申し訳なく思う気持ちと、でも東京で発電はできないという事実の葛藤が見られました。しかし、一方で無回答や特に何も思っていない人が多いことが衝撃でした。また、Q2の解答と照らし合わせると、国内での原子力エネルギー使用に反対した人より、賛成した人のほうがQ3 の無回答率が高いことがわかりました。これは、課題に対する興味と意識の不足、考えの軽薄さが顕著に表れた結果と考えられ、重要な課題です。
福島では、風評被害や偏見を残念に思う声が多かったです。「現状を知ってから判断してほしい」という意見があったように、私たちには、現状を知ろうとする関心が足りず、その上偏見を持つ人がいることは一つの課題だと考えられます。