日本では、錠剤の包装としてPTPシートが主流となっています。そのため、PTPシートは年間約13,000トン※、約130億枚が生産され、医薬品包装の中でも最も広く使用されています。しかしPTPシートは、プラスチックとアルミニウムが貼り合わされた構造をしており、通常の使い終わったPTPシートは、自治体にもよりますが「プラスチックごみ(資源ゴミ)」として処分するのが一般的です。
しかし、資源ごみとして分別している方は3割未満となっています。本来は資源として利用できる素材を含んでいても、その行き先はあまり意識されてきませんでした。
※富士キメラ総研「2019年 メディカル・ライフサイエンスケミカルの現状と将来展望」(PTPシート国内市場2018年実績13,400トン)
(出典:おくすりシート リサイクルプログラム®|第一三共ヘルスケア)
これまで、使い終わったPTPシートは「捨てるもの」として扱われてきました。 しかし近年、その考え方が少しずつ変わり始めています。回収の仕組みや技術の工夫により、分別が難しいPTPシートについても、資源として再利用する取り組みが進められています。リサイクルは、単にごみを減らすための取り組みではありません。使い終わった包装に新たな役割を与え、資源を循環させる「次の未来」をつくる選択でもあります。PTPシートが「ごみ」ではなく「資源」として扱われるようになれば、医薬品包装のあり方そのものも変わっていくはずです。
~企業様紹介~
第一三共ヘルスケア株式会社は、人々の健やかな毎日を支えるために、一般用医薬品(OTC医薬品)を中心に、スキンケアやオーラルケア(歯みがきなど)といった分野も幅広く展開されています。
コーポレートスローガンは
「Fit for You 健やかなライフスタイルをつくるパートナーへ」。
一人ひとりの生活に寄り添い、こころとからだの健康をサポートする企業として活動されています。
国内の薬局・ドラッグストア等での売上構成は、医薬品が約70%、スキンケアとオーラルケアが約30%で構成されています。
また、近年は新たな取り組みとして、海外事業への展開、機能性食品など新カテゴリーへの挑戦、通信販売など販売チャネルの拡大等にも積極的に取り組まれています。
御社では、使用済みのPTPシートを回収し、「おくすりシート リサイクルプログラム®」の取り組みを行っておられると伺いました。本取り組みの内容や目的について、ぜひお話をお伺いしたいです。
私たちはOTC医薬品を製造するメーカーとして、これまで「循環型社会」におけるものづくり「動脈」の立場から、環境への配慮に取り組んできました。 具体的には、製品包装に使われるプラスチックの使用量削減などです。バイオマスプラスチックの採用、環境負荷の少ないインクへの切り替えなどを進めてきました。 しかし、循環型社会は製品をつくり、店頭に並べて終わりではありません。 使用後に発生する廃棄物を回収し、再生・再利用へとつなげる「静脈」の取り組みも不可欠です。 特に、生活者が使用した後の包装や容器のうち、使用済みのPTPシート(おくすりシート)は、資源化の仕組みが十分に整っておらず、その多くが廃棄されているのが現状でした。 こうした状況を受け、「使用済みのPTPシート(おくすりシート)に何かできないか」と考えたことが、取り組みを始めるきっかけとなりました。 協力会社と共同でプロジェクトを検討する中で調査を進めた結果、日本国内ではおくすりシートが年間約13,000トン生産されていることが分かりました。 この課題に向き合うため、2022年10月から横浜市において、日本で初めてとなる生活者参加型のおくすりシートリサイクルプログラムの実証実験を開始しました。たくさんの方にご協力いただき、2025年10月時点では、回収拠点数は102拠点、回収量は15トンと大きな成果を得ています。
回収された使用済みのおくすりシートについて、資源としてどのような形で再利用されているのかを教えていただけますでしょうか。
私たちはものづくりを行う企業として、廃棄物を新しい製品の原材料として活用するマテリアルリサイクルを目指しています。 しかし、実際に取り組みを進める中で、さまざまな課題が明らかになりました。PTPシート(おくすりシート)はアルミとプラスチックからできていますが、両者を完全に分離することが難しく、プラスチック側にアルミが一部残ってしまうことがあります。また、回収対象にはOTC医薬品だけでなく医療用医薬品のシートも含まれており、薬の特性に応じて素材や構造が異なります。その結果、ポリプロピレンやポリ塩化ビニルなど複数のプラスチックが使われ、複合素材であることが分離工程をより難しくしています。 こうした課題を踏まえ、現在は協力会社とともに、それぞれに適した形でリサイクル処理する仕組み作りを進めています。その一つに板材として再生する方法を検証しています。さらに、回収に協力してくださった生活者の方々や回収拠点で使用できる文房具や事務用品として再生することで、「回収されたPTPシート(おくすりシート)が新しい形に生まれ変わった」ことを実感してもらえるよう、回収の協力で付与されるポイントで交換できるペンやトレーも製作しました。
未来社会において、この「おくすりシートリサイクルプログラム®」はとても意義のある取り組みだと感じました。 可能であれば、今後は全国へと広がっていくことを期待しています。 今後の展望について、お伺いしたいです。
現在、全国各地から本プログラムに関する多くの声をいただいており、次の新たな地域へ活動を広げていくことを視野に入れています。一方で、輸送費をはじめとする運営コストの課題もあり、現時点で「全国展開」を簡単にお約束できないことは心苦しく感じています。 そのため、まずは回収されたPTPシート(おくすりシート)がどのようにリサイクルされ、製品として生まれ変わるのかを丁寧に示し、回収と再生の両方を着実に進めていくことが重要だと考えています。 現在では全国で回収されているペットボトルも、資源として定着するまでには試行錯誤を重ね、長い年月を要しました。「おくすりシート リサイクルプログラム」についても、全国に広げていくためには、まだ多くの段階を乗り越える必要があると感じています。 将来的には、私たちだけでなく、他企業や行政とも連携しながら取り組みを進め、この国で「PTPシート(おくすりシート)はリサイクルできて当たり前」と思われる社会を実現するための第一歩を踏み出せたらと考えています。
私たちは、試作品として制作されている時計を活用し、お薬の形をしたパーツを貼り付けて、自分だけのオリジナル時計を作る体験ができたらよいのではないかと考えました。この体験では、時計を作る楽しさと同時に、薬の形に触れることで、普段あまり意識しない薬の存在や役割に自然と関心を持つことができます。 さらに、このような体験を通して、子どもから大人まで年齢を問わず、PTPシートの役割や、使用後のリサイクルのあり方について考えるきっかけが生まれると考えています。実際に手を動かしてものづくりを楽しむ過程で、薬の正しい使い方について学ぶだけでなく、環境への配慮や資源循環の大切さについても気づきを得ることができるでしょう。また、参加者同士が互いに意見を交換したり工夫を共有したりすることで、学びがさらに深まり、日常生活の中での行動や考え方にもつながるのではないでしょうか。
今回の取材を通して、これまで当たり前のように捨てていた使用済みのPTPシートが、実は多くの課題を抱えながらも、資源として再利用される可能性を持っていることを感じました。日本ではPTPシートが医薬品包装の主流である一方、通常の自治体回収では処理が難しく、その多くが廃棄されている現状があります。 そのような中で、回収やリサイクルに取り組む企業の活動は、PTPシートを「ごみ」ではなく「資源」として捉え直す大切な一歩だと感じました。お話を伺う中で、リサイクルを進めるためには技術だけでなく、生活者一人ひとりの理解や協力が必要であると感じました。PTPシートがリサイクルできて当たり前の社会を実現するためには、企業や行政の取り組みに加え、私たち自身が関心を持ち、行動していくことが重要だと感じています。今回の取材は、身近な医薬品包装から循環型社会について考えるきっかけになりました。
参考文献及び参照日
第一三共ヘルスケア株式会社「おくすりシート リサイクルプログラム®」 (参照日:2025年12月14日)
「おくすりシート」が抱える環境課題|PRTIMES STORY (参照日:2025年12月14日)