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 ベーコンの歴史
 ベーコンとは、豚肉を塩漬けにし、その塩を抜いたあと燻製にしたものです。ドイツでは、非加熱がベーコンの標準で、加熱した物はハムに分類されています。
 ベーコンの発祥は紀元前数世紀頃のデンマークと言われています。当時、長い航海用に豚肉の塩漬けが利用され、それを火であぶって貯蔵していました。その時、薪が湿っていたために煙で燻された状態になった豚肉が、より美味しく、より保存出来る事が分かりました。この塩漬け豚肉を煙で燻したものが現在のベーコンの原型となっています。
 ベーコンの名前の由来は、イギリスのフランシス・ベーコンが船舶用の食料として塩漬け豚肉の燻製品を大量に調達するよう命じたことによると言われています。艦隊にトン単位でベーコンを積み込んでいたとされ、それが世界中にベーコンが広がった原因となりました。日本には幕末頃に伝わりました。
 生ハムの歴史
 生ハムとは、豚肉を塩で漬けて燻製したもの、もしくは燻製せずに塩で漬けて乾燥させたもののことです。イタリア式の「プロシュット」、スペイン式の「ハモン・セラーノ」は燻製せず作る生ハムですが、ドイツ式の生ハムは燻製して作る生ハムです。その燻製して作る生ハム、「ラックスハム」は、塩漬けにした豚肉を燻製して作ります。ラックスとはドイツ語で「鮭」のことを言い、その名の通りラックスハムの色は鮭のような鮮やかな赤い色をしています。
 生ハムの保存期間は、塩漬け・乾燥・熟成の過程があります。そのうち乾燥・熟成には300~600日にも及ぶものがあり、その保存期間は2年近くにもなります。ベーコンは豚のバラ肉が加工されたものですが、それに対しハムは豚のモモ肉を加工したものです。
 生ハムは家畜の飼育とほぼ同じ時期に誕生したとみられており、その時代は紀元前約7000年ごろです。生ハムは今から約9000年前からすでにあったなんて、驚きですね。
 ジャーキーの歴史
 燻製の代表としてジャーキーが挙げられますが、ジャーキーはコロンブスがアメリカ大陸を発見するよりも前からインディアンによって作られたと言われています。バッファローなどを追いながら生活していたインディアンにとっては、持ち運びやすく保存性の優れている燻製はとても便利な食料です。その後ジャーキーはアメリカがベトナム戦争の時に兵士の保存食料として食べられていたことで普及していきました。
 ジャーキーは肉を干して出来た保存食で、鶏のささみ、馬肉、豚肉、カンガルーやワニの肉などが使われますが、主に出回っているのは牛肉で出来たビーフジャーキーです。ビーフジャーキーには、DNAの合成、造血、神経発育の重要な役割を持つビタミンB12やDNAの合成、インスリン、性ホルモンの合成の重要な役割を持つ亜鉛などが含まれており体にもいい食べ物です。
 塩の香料を添加させて燻製液に漬け、それを燻製しながら焼いていったものをスモークジャーキーと言います。作り方としては10時間塩漬けにしたのち塩抜きをします。その後乾燥に10時間、燻製に2時間かけます。天日干しするとより保存性がより高くなります。
 スモークサーモンの歴史
 スモークサーモンとは塩漬けにした鮭を燻煙で風味付けしたものです。それは古くから世界の至る所に根付く保存食であり、日本でもアイヌ民族が冷燻によって作っていました。これを「トバ」と呼びます。
 スモークサーモンは日本では現在でも一般的に冷燻で作られます。しっかりと塩漬けし、塩抜き、乾燥をした後に20℃前後の低温で長い時間を掛けて燻煙します。
 ヨーロッパで使われる鮭として代表的なのは「アトランティックサーモン」です。食材としては、今もスモークサーモンやロックス、ムニエル、フライなど幅広い料理に利用されています。対して日本で使われる鮭で代表的なものは「オースケ」です。この名前だとあまりピンと来ないかもしれませんが、別名の「キングサーモン」と呼べば、一度は聞いたことがあるでしょう。
 一方、前述の「トバ」は日本の伝統的なスモークサーモンと言えます。トバはアイヌにとって、自分たちの自給的な食料として重要な役割を果たしていただけでなく和人との交易品としても重要なものであり、さらに鮭は「カムイチェップ(神魚)」と崇められ、衣類に利用されていました。因みに、トバの商品化がされたのが昭和50年代前半と言われています。
 ジャーキーの一種ともされるものが、まだ日本には存在します。それは「鯨のたれ」と言われるものです。これはツチクジラの赤身肉を塩または醤油ベースのタレに漬け込んだ後、天日干しした千葉県房総地方の特産品です。今はさほど出回ってはいませんが、かつてはそのまま食べると硬すぎたので調味料をつけず軽くあぶってから裂いて食べるのが一般的でした。
 いぶりがっこの歴史
 いぶりがっことは秋田地方に伝わる漬け物で、「いぶり」は煙が出る様子の「燻り」、「がっこ」は秋田弁で漬け物のことを意味します。
 いぶりがっこが誕生したのは、室町時代ごろの秋田県と言われています。秋田県では特に雪が深いため、大根などを天日干しにすると凍ってしまいます。そこで、囲炉裏の上に吊るし、燻製にして、米ぬかと塩などで漬け込むことで凍るのを防ぎました。これが、いぶりがっこの始まりです。
 現在では、10月半ばから約4~5日間程度燻し、10下旬から2~3ヵ月漬け込みます。特徴はナラや桜などの木を囲炉裏で燃やすことで、夜間でも余熱でじっくりと水分が抜け、また、燻煙の香りがつくことです。
 いぶりがっこは、たくあんの食感に加え、たくあんでは味わうことができない燻製の味を楽しむことが出来ます。ご飯やお酒などと共に、また、サンドイッチの具に使ったりと様々な食べ方を楽しむことが出来ます。
 ソーセージの歴史
 地球上に人類が登場した頃から肉類は食べられていました。初めの頃は肉類を生で食べられていましたが、火を使えるようになってからは、肉を焼くことや、煮たりすることを覚えました。文化が発展していき、人類は獲ってきた肉を保存することを考え、干したり、煙で燻したりしました。これが、肉加工の始まりとなりました。
 メソポタミア地方では、5000年ほど前にソーセージが作られた説があったり、紀元前900年頃には、ホーマーという人物の詩の中に「ソーセージ」という言葉があり、とても驚きです。
 ソーセージの語源には、古代ドイツ語で豚という意味の「Sau」、ほろ苦い香辛料という意味の「Sage」という言葉を合わせ「Sausage」という言葉が出来た説があります。
 ソーセージには胡椒・メース・ナツメグ・コリアンダー・唐辛子・セージなどがよく使われます。香辛料の種類や量によって様々な味を生み出して楽しむことが出来ます。
 ソーセージは世界各国で作られています。その呼び名は、ドイツ語でWrust(ブルスト)、フランス語でSaucisse(ソーシス)、スペイン語でKorb(コルブ)、ポーランド語でKielbasa(ケルバサ)、ハンガリア語でKorbas(コルバス)、ロシア語でKarbas(カルバス)などと呼ばれています。
 鰹節の歴史
 鰹節の起源は、はっきりとは分かっていません。ですが、1300年ほど前の古事記にも「堅魚」という名前が用いられており、これは鰹節のことを指しているとされています。現在も和食のだしとして欠かせない鰹節ですが、ずいぶん昔から用いられてきたことが分かります。鰹節は戦国時代にも活躍しました。タンパク質に優れ、兵士が食べるための食料として広がっており、旅行者にとっても必要な携帯食品でした。
 そんな鰹節を燻製する手法が考案されたのは1674年のことです。紀州の甚太郎という人物がはじめて鰹節を燻製しました。のちに、1758年に土佐の与市が改変し、現在に近い鰹節の燻煙法になりました。また、その燻煙法が広まるにつれて、他の地域でも伊豆節、薩摩節などいろいろな場所で作られるようになりました。
 こうして現代まで伝わった鰹節は、今でも天然のだしとして私たちの食卓を彩り、また、「勝男武士」とも言われ縁起のよいものとして、祝儀の贈答用としても用いられます。
 日本の燻製の歴史
 日本では昔からどの家にも「囲炉裏」が存在していたことで「燻煙法」はごく自然と人々の生活に馴染んでいたと考えられています。囲炉裏の上に、串刺しにされた魚や野菜を吊るし、囲炉裏から上がる熱と煙を利用し、自然のままに燻製を作っていました。「いぶり大根」もその一つで、雪がたくさん降る東北地方では外で大根を干すと凍ってしまうので、囲炉裏の上に大根を吊るし、煙で燻すことで乾燥させて作っていました。600年前より大根漬けが行われ、「いぶり大根漬け」と呼ばれていました。
 日本の燻製品で一番に頭に思い浮かぶのは「鰹節」でしょう。鰹は古くより保存食として加工されていました。1200年前には薪で燻す「燻煙法」により、それまでよりも保存が効くようになり、重宝されました。平安時代、ナラヤクヌギで燻した燻製方法が工夫されることで、穀物と同じように賦役品(ぶえきひん)になるほど価格が上がっていったそうです。
 このように、燻製は昔からあり、歴史あるものなのです。しかし、肉類の燻製は行われませんでした。なぜなら、江戸時代の日本では食肉が禁止されていたからです。肉類の燻製が初めて開始されたのは明治以降からです。明治5年、長崎の片岡伊右衛門が、アメリカ人のペンスニから食肉加工の製法を教わりました。
 肉類の中でも、現在も多くの日本人に食べられるソーセージは、ドイツ式製法が主流で、第一次世界大戦で捕虜となったドイツ人が日本にとどまり、製法を広めて、日本人がドイツ人捕虜の作り方を学んだものです。そのドイツ人はカール・レイモンです。彼は日本人に足りない動物性のたんぱく質を、ハム・ソーセージを食べることで日本人の貧弱な体型も欧米にも見劣りしない立派な体型になると考えました。そこで、彼は自分の作ったソーセージを函館市内で売り始めました。レイモンさんの死後も、名前をブランドとして現在まで受け継がれてきたため、今のソーセージがあります。高度経済成長期に日本の食生活は大きく変わり、ハムやソーセージなどの加工食品が食卓になじみのあるものになりました。
 
 
 
               
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