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 燻製の科学
 燻製も他の保存食も保存性を高めるメカニズムは基本的には同じで、食品を乾かしたり、食品の水分を取り除いたりすることによって殺菌効果を発揮しています。燻製の特徴として、燻煙をかけて燻すことが挙げられます。
 燻製に使われる煙のことを燻煙といい、燻煙には食品に殺菌成分や防腐成分を浸み込ませる働きがあります。中でも代表的な燻煙に含まれる殺菌、防腐成分として、カルボニル化合物、フェノール系化合物、有機酸があります。
 まず、カルボニル化合物は非常に高い殺菌成分と防腐効果があり、これによって食材の水分が抜かれ、食材が乾燥状態にされます。そして、食材保存が可能になります。燻製のほのかな渋味と苦味などが生み出す深い味わいはこのカルボニル化合物の作用が大きく関係しています。  
 次に、フェノール系化合物は燻製に使われる木材に含まれる主成分のセルロース、ヘミセルロース、リグニンが熱分解で出来たものです。主な働きとして、燻製中の食品に反応して作られた強い樹脂膜が食品を包み、外部からの細菌の侵入を防ぎます。また、長時間の燻製により、食品に含まれる水分を抜き、保存性を高める働きがあります。
 
 最後に、有機酸は「カルボン酸」ともよばれ、抗菌作用があります。このように、それぞれの働きが食品の保存性を高め合うことが出来ているため、燻製が成り立っています。
 食品に細菌が繁殖した状態を「腐った」状態といいます。細菌を繁殖させない為にも塩漬けや乾燥といった工程がありますが、燻製もまた重要な工程です。特に温燻(70~80℃で燻製すること)、熱燻(80~140℃で燻製すること)では、燻煙をかける際に食材の温度をある程度まで上げることで、食材の中の細菌を殺しているのです。細菌は大体60℃以上で死滅するので、それ以上の温度にするのが望ましいと言えます。しかし、とにかく温度を上げればよいというわけではありません。タンパク質は、80~85℃を超えると変質してしまい味が変わってしまいます。たとえば肉を加熱すると、固くなりパサパサとした食感になってしまいます。ですから、殺菌しつつ美味しさを保つためには60~80℃で2時間ほど熱をかけることが望ましいです。  
 以上の理由から燻製を作る工程の中でスモーカーの温度管理や温熱乾燥をすることが大切です。
 塩漬けの科学
 塩漬けする工程からも殺菌・減菌効果が期待できます。雑菌の繁殖には水分が必要です。食品を塩漬けにすることで、その水分を減らし、雑菌の繁殖を予防することが出来ます。その後、塩抜きして風乾する工程でも、さらに水分を減らすことが出来るため殺菌効果をもたらしてくれます。一般の殺菌なら、3時間燻製すれば雑菌のほとんどが死滅します。このように、燻製の保存性は燻煙の中にある殺菌、酸化防止効果などと共に、樹脂膜の殺菌効果、燻煙中の乾燥効果などが相乗的に作用しあって得られるものとなります。
 風乾の科学
 食材表面に水分が多いと燻煙が上手く付着せず、見た目や風味が悪くなることがあります。ですので、塩抜きをした食材は風乾を行い、その後、燻乾を行います。  風乾とは燻製によって出来た水分を脱水してくれる作用のことを言います。この作用によって水分蒸発をして、素材の重量を減少させる働きをしてくれます。さらに、微生物の生育を抑えることもできます。燻乾をすることで魚類は毎日約5%ずつ重さが減り、小型のものだとさらに軽くなる割合が大きくなります。豚や牛の肉では血を絞った後、重さは3~5%減少します。その後、塩漬けや燻製後には9~14%減少し、赤肉での水分の量は60%前後となります。
 また、温度や湿度も重量の減少に大きな影響を与えています。湿度が高くなるほど乾燥の速度は早くなります。そのため、乾燥した燻煙材よりも湿った燻煙材を用います。また、燻煙の温度が一定である場合、時間が長くなるほど乾燥が促進されます。他にも空気の流れの速さも関係があります。乾燥する速度は空気の流れの方向によって影響されるのです。このように煙の流れのクセや、温度と湿度、時間などを知っておけばもっと良い燻製が出来るのです。
 燻煙の科学
 燻製と言えば、煙で食品を燻すことで風味付けなどを行います。燻煙は、多くの成分を含んでいます。その種類は確かめられただけで少なくとも400種以上です。その煙の成分をよく付着させるためには、食材が乾ききらず湿りすぎないバランスが大切です。乾燥しすぎた状態では煙の成分である物質が、食品の表面に含まれている水分に溶け込む量が少なくなってしまいます。一方、表面が湿りすぎている状態では,表面にスモークによる色むらができやすいとされています。
 木材は、燻煙の材料として使われます。煙の発生に使用される木材は広葉樹の堅木が好まれます。逆に針葉樹は樹脂が多いため,不快な臭いが付きやすくなり燻煙の材料には適しません。広葉樹はその国で手に入りやすい木を用いることが多く、日本ではサクラやブナがよく使われたのに対し、ドイツではリンゴ、ヨーロッパやカナダではヒッコリーが用いられました。木材は、古来おが屑などが多かったのですが、近年はスモークウッド、スモークチップと呼ばれる燻製専用の燻煙材が市販で販売され、昔よりも原料が一定の乾湿状態で使いやすく異物混入が少なくなりました。
 美味しさの秘密
 燻製のときに現れるやまぶき色の外観。肉組織の桃色の発色。これは私たち人間に食欲をもたらしてくれる重要な燻製効果です。良い発色のためには、塩漬けの工程の他に、燻煙をかける際の温度や時間も大切です。あの食欲をもたらしてくれるスモークカラーも肉組織の鮮やかな発色も、時間と手間が掛かっているからこそのものとなります。
 燻製の工程には、塩漬けにする工程があります。この工程で塩、香辛料、保存材によって味を付けます。この工程を行うことにより、食材に適度に味を付け、保水性を高め、ハムのような加熱された肉などであれば、結着性を高めることが出来ます。他にも、燻煙の美味しさは香りも作用していると言えます。香気成分というものがあり、香りは燻煙工程に煙を食材にあてることで、その中に含まれる成分を付着させ香りを出します。燻煙の香りは主にフェノール類という成分によって出来ています  燻煙の成分は味と香りを合わせて、「風味」と言えるのです。
 健康に良い燻製
 鮭の燻製は、塩分が少なく水分が多いほうです。まず鮭の燻製が日本に導入されだしたのは明治時代以降だそうで、当時、ヨーロッパから渡来してきたと考えられています。国内でも昔から魚や肉を保存するために燻製が利用されてきました。そんな鮭の肉の成分には、学習能力向上、認知症予防、血栓予防などに効果があるDHA、EPAの多価不飽和脂肪酸や、疲労回復効果が期待されるアンセリン、さらには、体内の酸化抑制作用やがん予防に効果があるとされるアスタキサンチンが含まれています。また、他にも網膜の色素となるロドプシンの主成分となっていて、目の健康を維持するための役割を果たしてくれるビタミンAもあります。この栄養素は皮膚や喉などの粘膜を正常な状態を維持する作用があると言われているため、免疫力を強化し、感染症の予防にもつながるとも言われています。  もう1つこれに似た食材があります。それはソーセージの燻製です。この食材は、良質なたんぱく質とともに、ビタミン群や、リン、マグネシウム、銅、鉄などの貴重な栄養素を摂ることができます。
 健康に悪い燻製?
 近年、燻煙の中に含まれる多環芳香炭化水素が人の体に影響があるものではないかという発表があり、心配されています。他にも、煙の成分を分析したり、成分の量を測ったりなど国外では幅広い研究が行われています。そこで最近は、EUや韓国などは基準値を超える製品を回収したりなど国際的に規制が厳しくなっている国もあります。  燻製は保存のために塩分を大量に使うものが多いです。また乾燥させる時に、さらに塩分濃度は上がっています。その後、塩抜をして塩分濃度は下げるとはいえ、塩分は多いです。そのため、高血圧の方や肝臓疾患のある人は塩漬けのときに塩の量を減らすなどの工夫が必要です。
 
 
               
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