1. 環境負担の増加
大量の食品ロスの発生により、私たちは環境にも負担をかけています。
日本での主な食品ロスの廃棄手段は焼却処理です。
加工業者や流通業者、飲食店、家庭などから処理工場に運ばれ処分されますが、
水分を多く含む食品ロスの廃棄は温室効果ガスの発生原因となります。
焼却後の灰の埋め立てにおいても、環境に大きく負担をかけます。
また、世界の多くの国では埋め立てによって処分されています。
食品を埋め立てたときに発生するメタンガスは二酸化炭素の約25倍の温室効果があるといわれ、気候変動に大きな影響を与えています。
これは干ばつや洪水などの異常気象が引き起こされる原因となり、食べ物を作る環境にも影響を与えてしまいます。
また、食品ロスが発生するまでサプライチェーンのなかで、家畜を育て、稲や野菜を栽培するにも、運送するにも、
多くの人手とエネルギーが使われます。
食品ロスは、それらを丸ごと無駄にすることになるのです。
食べ物を作る、加工する、配送する、といった様々な過程を経て食卓へ届いた食べ物を捨てることは、
その段階で使われたエネルギーを無駄にすることになるんですね。
その通りじゃ。
食品を捨てることは、食品の価値以上のものを捨てることになるのじゃ。
(II)バーチャルウォーターと食品ロス
バーチャルウォーターとは、ある国が輸入している食料を自国で生産したと仮定したときに、必要とされる水の量を推定したものです。
食料を自国で生産せず輸入する時、日本はその食料を生産するために必要だったはずの分の水を使わずに食料を得ています。
言い換えると、形を変えながら水を輸入しているということになります。
こう考えると、現在の日本の食料自給率は40%程度であるので、日本は外国の水に依存しているとも言えますね。
また、地球上の水資源には限りがあり、飲み水として利用できる水は地球全体の0.01%を満たしません。
一方で、今世界では約20億人が安全に管理された飲み水に困っています。
食料の輸入を通して世界中の水と繋がっていると考えると、
今世界で起こっている水不足や水質汚濁等の水問題は、日本での食品ロス問題と無関係ではないのです。
また食料の原料となる農産物の生産から廃棄までの過程で使われる水の総量を、ブルーウォーターフットプリントと言います。
食料を無駄にするということはこれらの農産物に使われた水も無駄になるということです。
廃棄されてしまう食品を減らすことは、これらの無駄になってしまう水も救うことになり、水不足問題の解消にも繋がります。
2. 経済的な損失
1 世帯で1年間に出される食品ロスの金額は、65,000円/年/世帯と言われています。
日本全体では、残飯による家計の損失は 11.1兆円となり、これは農業・水産業の総生産額とほぼ同じ額となります。
また、食品ロスを廃棄する費用には、私たち国民が納める税金が使われています。
令和元年度、食品ロスを処理するのに約1884億円の税金が用いられました。
食べ残しや食材の廃棄は、その購入費用が無駄になるだけでなく、
納めた税金の無駄づかいも招いていることになりますね。
少しでも食品ロスを減らすことができれば、
廃棄にかかる税金を異なる用途で有効活用できるということじゃのぉ。
参考文献:
・gooddo -「日本のバーチャルウォーターによる問題について現状を知ろう」(https://gooddo.jp/magazine/sustainable-consumption-production/virtual_water/8701/)
東洋経済 ONLINE -『食品ロスが生活に与える「4つの深刻な影響」』(https://toyokeizai.net/articles/-/343691)(食品ロス問題ジャーナリスト、井出留美さんによる記事)
朝日新聞 SDGs ACTION! -「食品ロス削減 経済・環境・社会から見る三つの意義とは?」(https://www.asahi.com/sdgs/article/14539143)(食品ロス問題ジャーナリスト、井出留美さんによる記事)
・環境省 -「バーチャルウォーター」(https://www.env.go.jp/water/virtual_water/index.html)「食品ロス削減キャンペーンについて(案)」(https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/basic/conference/resource/cat.files/d149b73893f34111bdee577d505a29ea.pdf)
・東京都 -「一般廃棄物処理事業実態調査の結果(平成30年度)について」(https://www.env.go.jp/content/900515308.pdf)