事業系食品ロス


事業系食品ロスが発生する段階は、3つにわけることができます。
製造段階、卸売・小売段階、外食産業です。


1. 製造段階

(I) 厳しい品質基準

食品を製造する段階にある工場では、製造の段階で商品が割れたり欠けたり、パッケージが傷ついたりなど、
その市場の基準に満たなければ食べれるものであっても処分されています。 例えば規格外品。

規格外品とは市場で決められた大きさや形、品質、色の「規格」から外れてしまった製品のことです。
決められた重量や容量でパッケージされていなかったり、パッケージの見た目が異なる場合は、
流通できない商品なので、廃棄の対象となってしまいます。

- 規格外野菜とは -
規格外野菜とは、市場で決められた大きさや形、品質、色の「規格」から外れてしまった野菜のことです。
大きさにはS・M・L、形や品質や色には、A・B・Cという分類がされています。
規格に合わない野菜や、傷がついた品質の良くない野菜は規格外野菜となり、
これらの規格外野菜は、商品として出荷はされることはありません。
カット野菜や加工品として商品になることもありますが、ほとんどが廃棄されるのが現状です。
規格外野菜として廃棄される量は、生産された野菜量の約30%〜40%にものぼります。


全面・衛生面では問題なく食べられるのに
規格から外れただけで売れなくなってしまうなんて、、、



もったいないのう、、
じゃが、これは日本人の求める高い品質基準に生産者側が応えようとした結果なんじゃ。


また、食品業界には、「欠品ペナルティ」という習慣があり、製造業者は小売業者の発注量に対応できず欠品させてしまうと、
品切れによる機会損失や顧客満足度の低下を重視する小売業者から
「取引停止」を言い渡されてしまったり、発注者側に罰金を払わなければならなくなります。
そうして事態を避けるため、製造業者は欠品のないように食品を過剰生産します。

こうして発注量より多くの食品を生産することになり余った食品は処分されてしまっているのです。

(II) 計画的な大量生産

製造段階で食品ロスが大量に発生する要因のもう一つは、製造側の大量生産です。
2019年、節分後に売れ残った恵方巻きが大量廃棄される「恵方巻き問題」が話題となりました。

これらの恵方巻きは毎年生産量が需要を下回り、大量廃棄されてているにも関わらず、どうして生産を減らす対策が取られなかったのでしょうか?
その理由の一つに日本の大量生産・大量消費の経済システムがあります。

日本の経済はこれまで、大量生産・大量消費を繰り返すことで成り立ってきました。
資本主義経済において企業が利潤をあげる方法は、製造業では商品を生産すること、そしてそれらの製品を販売することです。
つまり、できるだけ多くの商品を生産して、それらの商品をできるだけ多く販売する事で利潤を最大にすることができます。

先ほど例にあげた恵方巻き問題においては、恵方巻きが不足しない、余らないちょうど良い数量を完全に予測することはできません。
そこで、企業は廃棄するためにかかるコストと、商品不足売上が伸びなかった場合の損を比較します。
作らないよりも大量に生産して廃棄するほうが利益を得ることができるケースが多くあり、結果、大量の食品ロスが生まれてしまうのです。

製造段階での対策をみる

2. 卸売・小売段階

卸売業者・小売業者によって食品が販売される段階では、食品業界の「3分の1ルール」という習慣によって
納品期限、販売期限が設定されています。
このルールでは、食品の製造日からその食品の賞味期限までの期間を3等分し、

はじめの3分の1を「納品期限」(卸売業者が小売店へ納品しなければならない期間)、
次の3分の1の期間を「販売期限」(小売店が商品を店頭に並べておいてもよい期間)、
最後の3分の1の期間を「賞味期限」(消費者がその食品を美味しく食べられる期間)とするものです。


他の国でも食品の納品期限はありますが、日本の消費者は、特に食品の品質や外見に厳しい傾向があり、
フランスの⅔,イギリスの¾.という納品期限に比べ、圧倒的に短くなっています。

このルールによって食品の流通に制限がかかり、「3分の1」を過ぎただけで、食品の価値は大きく下がってしまっています。
例えば、賞味期限の2ヶ月前に小売店に渡すことができなかった商品は食品メーカーに返却されます。
返却された食品は通常の値段で売ることができず、約2割はディスカウント店などに引き取ってもらえますが、
残りの食品は廃棄されてしまいます。

サプライチェーンのなかで、賞味期限が確保された商品を店頭に並べるために作られた慣習ですが、
結果的に大量な食品ロスへと繋がっているのです。

卸売・小売段階での対策をみる

事業系食品ロスの背景には、「欠品ペナルティー」や「3分の1ルール」という
業界内での暗黙のルールがあったんですね。



できるだけ新しく豊富な品揃いを期待する消費者の要望に応えたい、
という「消費者至上主義」の考え方が見て取れるのぅ。



コンビニでの食品ロス

コンビニは日本中に展開されており店舗数が非常に多く、
各店舗で賞味期限切れの弁当やおにぎりなどの食品が廃棄されることで多くの食品ロスが発生していることが問題とされています。
日本には5万を超えるコンビニがありますが、現在、1店舗1日平均、約50~70kgの廃棄物を捨てています。
そのうち食品の割合は5分の1で重さにするとおよそ10~15kgとなります。

日本のコンビニは、顧客を満足させるためにあらゆるサービスを磨いてきたため、非常に高いレベルにあります。
都市でも地方でもほとんど同じ商品が売っていたり、24時間営業の店も多く、
いつでも好きなものを買えることは世界的に見ても珍しいことです。
しかし、こういった企業の努力の結果が食品ロスが生まれやすい構造を生み出してしまっているのです。

ロス削減のためには、「いつもどんなものでも手に入る」以外に
利用者の満足度を高める新しい価値観を築いていく必要があると言えますね。

コンビニの食品ロスへの対策をみる

3. 外食産業
外食産業でも、毎日大量の食品が処分されています。

店側の原因としては、食品の製造、調理をする際は過去の売上や近隣施設の催しなどを参考に
事前に仕込みを行うため、急な天候の変化などにより予想した販売量を下回ることが度々あります。
また、商機をのがしたくないという思いから多彩なメニューに対応するため、
あらかじめ過度な仕込みを行い、食品ロスに繋がることもあります。
飲食店などは、顧客に注文してもらい代金さえ支払ってもらえれば損をすることがないので
過剰なサービスの一環として食べきれないほどの量を提供してしまうこともあります。

客側の原因としては、量を把握せずに注文し、食べ残してしまうことが主な原因です。
この他にも、SNSに食品の写真を投稿し、「映え」を目的とする客による食べ残しや、
大人数での宴会の場において、食べきれないかもしれないと思ってもその場の雰囲気で注文してしまう、などがあります。




外食産業での食品ロスへの対策をみる

参考文献:
・株式会社エクシール -『食品ロスの原因「規格外野菜」|購入するメリットと販売場所3選の紹介!』
(https://www.exseal.co.jp/blog/taxonomy-27/9821/)
・全国農業協同組合連合会 広島県本部 -「出荷規格表」
(https://www.zennoh.or.jp/hr/syukkakikaku/)
・農林水産省 -「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_4-52.pdf)
・「⾷品ロス量の推移」(https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/attach/pdf/220609-5.pdf)
「外食・中食産業における食品ロスについて」(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/170516.html)
・kuradashi -「恵方巻きの廃棄問題とは?フードロス対策の4つの事例を紹介」(https://kuradashi.jp/blogs/kuradashi-magazine/455)
・Yahoo News -「食品ロスを生み出す「欠品ペナルティ」は必要? 商売の原点を大切にするスーパーの事例」(https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20170806-00073974)
(食品ロス問題ジャーナリスト・栄養学博士、井出留美さんの記事)
・japan-eat’s blog -「食品ロスとは Fin」(流通ジャーナリスト、渡辺広明さんによる記事)(https://japan-eat.com/entry/2022/02/24/113036)

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