国の対策

国により、様々な食品ロス対策が行われています


フードバンクへの支援

農林水産省では、食品の製造過程で発生する規格外品として捨てられる食品を引き取り、
福祉施設などへ無償で提供する「フードバンク」と呼ばれる活動を支援しています。
フードバンクに規格外品を提供した企業に対しては税制の優遇措置を適用するなど積極的な利用を促す活動を行い、
流通過程で発生する食品ロスの削減を目指しています。
この活動により、2018年には63.8%だったフードバンク活動を行う県の割合が100%へ増加しました。


フードバンクとは?

フードバンクとは安全に食べられるのに包装の破損や過剰在庫、
印字ミスなどの理由で流通に出すことができない食品を必要としている施設や団体、
困窮世帯に無償で提供する団体のことです。
フードバンク活動を通して、食品ロス削減だけでなく、貧困対策も推進することができます。


フードバンクは1967年にアメリカで発祥しました。
アメリカ最大の食料支援団体、「フィーディング・アメリカ」は、4600万人の支援者数をもち、
困窮世帯への総食品提供数は43億食、食品ロス削減量は158万トンに登ります。
この実績の背景には、助成金制度、農務省が買い上げた余剰農畜産物の提供、
食品寄贈者の責任を免除する法律(ビル・エマーソン善きサマリア人食料寄附法)、
寄付者の税制優遇制度などがあります。

日本では、2000年頃に「セカンド・ハーベストジャパン」が立ち上がったことを
きっかけに団体の立ち上げが進んでおり、2020年現在に120以上の団体があると言われています。
また、食品取扱量は年間4,000トンにのぼります。

一方で、食品取扱量は団体数の増加ほど増えていない、
生活困窮者自立支援制度による相談窓口の設置(1313機関)、
こども食堂の増加 (3718ヶ所)に伴う支援ニーズの増加に対応出来ていないなど、
日本のフードバンクには多くの課題も山積されています。
「フィーディング・アメリカ」のような例にならい、
フードバンクと行政との連携を促進することが求められています。

法整備の拡大

食品ロス削減を促すため、食品ロスに関する法律が国によって定められています。
食品リサイクル法と食品ロス削減推進法との大きな違いは、対象者が誰かということです。

食品リサイクル法は、「事業者」に対する法律で、
食品メーカー、卸売・小売業者、飲食店といった食品関連事業者が取り組むものです。
それに対し、食品ロス削減推進法は事業者だけでなく国民全体で連携し取り組むことを目指した法律です。

このような私たちの身の回りの法律についても
正しく理解することが必要なのじゃ。



「てまえどり」の呼びかけ

「てまえどり」とは、商品棚の手前に並べられている販売期限が近づいた商品を積極的に選ぶ行動のことです。
スーパーなどの小売店舗で消費者が奥に置かれた賞味期限の長い商品から取り、食品ロスにつながっている現状を
問題視した神戸市が平成30年10月に啓発キャンペーンを開始し、その後この運動は全国に広がりました。
これにより、小売店で期限が過ぎて廃棄されることによる食品ロスを削減する効果が期待されています。


農林水産省では小売店舗における、消費者へのてまえどりの呼びかけを促進するため、
日本フランチャイズチェーン協会、消費者庁、環境省と共同で、啓発物を作成しています。

また、これらの啓発物について、食品ロス削減に取り組んでいる人であれば
誰でも自由に使用していいとし、広く食品ロス削減削減の推進を図っています。

消費者への啓発

消費者に食品ロスを減らす必要性や、食品ロスを減らすためにできる活動をより知ってもらうため、
具体的な数値などを用いた食品ロスの現状をまとめた啓発用リーフレットや、
削減の取り組みを実践することでどれだけの効果があるかのなどを知らせるパンフレットなどを作成しています。

また、消費者庁ウェブサイトでは情報の集約と発信、レシピ投稿サイトを通して食品ロス削減レシピの発信したり
期限表示の理解の促進による早期廃棄の抑制などを行っています。

消費者庁HP

商習慣の見直し

食品を取り扱っている事業者に対して、商習慣を見直す働きかけが行われています。
過剰在庫や返品などの製造業や卸売業や小売業で起こっている食品ロスの原因となる課題について
農林水産省は「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」を設置し、取り組みの支援を行っています。

1. 納品期限の緩和
「3分の1ルール」に基づいた短い納品期限のなかで納品されなかったものは廃棄されてしまう可能性があります。
よって、小売店と連携し納品期限を緩和する(「3分の1ルール」を見直す)ことが求められています。

2. 賞味期限表示の大括り化
現在多くの商品の賞味期限表示が年月日で表示されています。
小売業者の在庫商品よりも賞味期限が前であることが理由で商品を納品できないことがあり、
納品できなかった商品は廃棄の可能性が高まってしまいます。
このため、賞味期限を年月または日まとめ(年月日表示のまま、日の表示を例えば10日単位で統一)にするなど
大括り化して表示することで在庫商品と納品する商品の賞味期限を一緒にし、食品ロスの削減に図っています。



3. 小売店での販売方法の見直し
小売店では商品を消費期限・賞味期限当日まで販売せず期限前に売り場から撤去することが多く見受けられます。
撤去された商品の多くは廃棄されることになるため、
小売店ではこのような期限間近の商品を値引きすることが求められています。

4. リードタイム(発注から納品までの期間)の見直し
日本では受注から納品までの期間が短いことや、欠品しないことを強く求められているため
事前に多めの生産を行います。このため、製造業者では余剰生産・廃棄が生じやすくなっており、リードタイムの見直しが必要です。
現段階では、小売業者は各仕入先(製造業者) への販売状況を共有することが求められています。


気象情報等を用いた需要予測の共有

今までは分断されていたサプライチェーンのためにメーカー、卸売、流通、小売が
独自に需要予測を行っていたため注文量のミスマッチが起こり食品ロスが発生していました。
そこで経済産業省と日本気象協会は連携して気象情報やPOSデータなどのビックデータを活用し、
共同で需要予測を行うことでサプライチェーンの無駄の削減を図るプロジェクトを開始しました。

このプロジェクトでは食品ロスの削減だけでなく返品・返送、回収・廃棄などで不要に発生する
二酸化炭素の削減も視野に入れており食品ロスと物流に過程での
二酸化炭素の排出の2つの課題を解決に導くことが期待されています。

参考文献:
・消費者庁 -「食品ロス削減関係参考資料」2019 (https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/assets/efforts_210826_0001.pdf)
・一般社団法人全国フードバンク推進協議会 -「フードバンク活動の現状と課題」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/meeting_materials/assets/review_meeting_002_191126_0014.pdf)
・ベネッセ -「食品ロス削減推進法の目的とは?政府が行っている取り組みもあわせて紹介」(https://benesse.jp/sdgs/article29.html)
・神戸市ホームページ -『神戸市発案の「てまえどり」が現代用語の基礎知識」選2022ユーキャン新語・流行語大賞を受賞しました!』(https://www.city.kobe.lg.jp/a04164/press/202212011903.html)
・環境省 -『「てまえどり」ダウンロードページ 』(https://www.env.go.jp/recycle/food/post_95.html)
・農林水産省 -「食品ロス削減に向けた商慣習見直しに取り組む事業者を募集します」(https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/210820.html)
・富山県 -「食品ロス削減のための商慣習見直し事例集」(https://foodlosszero.jp/common/doc/p_pamphlet202111.pdf)
・日本気象協会 -「需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/minkan/ws160308/shiryou3.pdf)
・消費者庁ホームページ -「[食品ロス削減]食べもののムダをなくそうプロジェクト」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/)

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