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日本人と熱中症

年代別の分析

体の特徴が異なる少年、成人、高齢者。
それぞれの年代で注意すべきポイントとは?

 気象庁の過去のデータダウンロード、消防庁の熱中症救急搬送者人員数、の2つのデータを利用して、分析を行いました。(用いた計算式についてはこちら)使用したデータは、2010年~2014年6月1日~9月30日、2015年5月1日~2017年9月30日の8年分です。

 少年、成人、高齢者の3つの年代について比較しながら分析を行い、わかったことを以下の表にまとめました。
表 年代別熱中症搬送者の特徴

※年代別の熱中症の発生場所については、熱中症患者速報平成27年度報告書の表8「年令階級別・発生場所別患者数」を参考にしました。そのほかの項目は、熱中症搬送者数のデータをもとに自分たちで分析した結果を使用しています。

補足

・搬送率が高い日は、必ずしも搬送者数が多いというわけではありません。
・搬送率が高い月とは、年代別の搬送率が50%以上の日数の8年分の合計が多い月のことです。
 少年:(5月)1176日、(6月)889日、(7月)576日、(8月)445日、(9月)850日
 成人:(5月)2242日、(6月)2493日、(7月)2633日、(8月)3211日、(9月)2437日
 高齢者:(5月)4131日、(6月)3873日、(7月)5851日、(8月) 6035日、(9月)3059日
(※5月のデータは直近3年分しかないため、5月の日数には8/3をかけて使用しました)

 熱中症と一言でいっても、少年・成人・高齢者で特徴が異なるよ!
このことを理解することが重要だね。


●少年
 表からも読み取れるように、運動中の熱中症に注意が必要です。少年は、成人と比べると汗腺が未発達で体温調節を素早く行えない、地面に近く輻射熱の影響を大きく受ける、といった身体機能の特徴もあります。特に、暑さに慣れていないGW明けや梅雨明け、夏休み明けといった時期は運動会の練習期間などの行事と重なることもあり、熱中症の危険性が高いといえます。また、季節の変わり目は体調を崩しやすいだけでなく、疲労もたまりやすく、熱中症の危険性も高まると考えられます。
 また、下の図より、少年は成人や高齢者と比べて、気温やWBGT(熱中症の危険度を示す指標)と熱中症搬送者数の相関が低いことが分かり、一般的に熱中症が危険だといわれる時期以外にも、予測外の熱中症搬送者が出る可能性が高く、注意が必要だと分析しました。

表 年代別熱中症搬送者数と各気象条件の相関係数

相関係数とは?

…2種類のデータの関係を示す指標

 少年が注意すべき、「運動会の練習期間、季節の変わり目」について、学校などでの呼びかけを強化していく必要があるね。 また、熱中症発生場所は集団生活を送る場所・人目のあるところが多く、体調不良を訴えにくい児童・生徒も多いから「いつも以上に顔が赤くないか」「汗をかきすぎていないか」など、周囲の人の気付きも大切だと思う。親世代や先生にも、この認識を広めていくことでより効果が高められるんじゃないかな。


●成人
  労作性の熱中症が多いため、作業中の熱中症に注意が必要です。健康な人でも、若い人でも、暑い中で無理をすることで発症することが特徴です。大量の発汗が原因となる事が多いため、適切な水分補給と適度な休憩が必要不可欠です。さらに、暑さにより労働作業が軽減されることはないため、気温が高い日ほど熱中症搬送者数が多くなる傾向にあります。この暑さが続く時期に、食事を3食欠かさず食べるなど、健康的な生活習慣を送ることが大切です。
 また、油断しがちな梅雨の時期にも発症率は高く、最高気温が25℃程度でも、湿度が70%を超えると発症のリスクが高まると分析しました。

 自分の体よりも仕事を優先してしまいがち。けれど、熱中症は初期症状のうちに対処をすればするほど早く回復できるから、早めの対策が重要だよ。

●高齢者
  日常生活時の熱中症の発症リスクが他の年代と比べて高く、熱中症の初期の自覚症状がないことが多いことが特徴です。住宅での発症率が高く、室内で1人で過ごす高齢者が熱中症を発症した際、発見が遅れがちになるため、注意が必要です。また、厳しい暑さが続くと、高齢者は数日かけて徐々に食欲や体力を失い、暑いときは活動を控えていても、疲れはたまっています。そのため、暑さのピークが引いても、高齢者搬送率は高くなる傾向があるため、熱中症に警戒する必要があります。他にも、5月上旬に搬送率が高くなっており、暑さに順応しにくい特徴も読み取れます。暑くなり始めのこの時期は、前日との気温差や日較差が大きいことが特徴で、体への負担も大きいため、高齢者にとって熱中症の危険性が高まると分析しました。
 体内水分量は、子どもは70%、成人は60%、高齢者は50%と、年を重ねるにつれてだんだん減っていきます。高齢者は筋肉量・細胞内液量の低下により、水分保有率も低下しています。さらに、トイレが近くなり水を飲むことを敬遠しがちになることや、のどの渇きに気付きにくくなることから、脱水が進みやすい状態にあることが多いです。したがって、のどの渇きを感じる前に、水分と塩分を摂取することが大切だと言えます。

 「私は大丈夫なはず」や「昔は大丈夫だったから」という考え方は危険。年齢を重ねることによる体の機能の低下や、熱中症の被害は年々深刻化していることを正しく捉えることが必要だね。

年代別に注意すべきことは異なる!
熱中症の発生場所は、1日の多くを過ごす場所で多く、ライフスタイルに結びついている!
少年は運動時、成人は労働作業時、高齢者は日常生活での熱中症の傾向が高い!