肉・魚介類

世界のかんぶつの中の肉・魚介類を紹介します。

干しだら<ノルウェー>
タラを寒風で乾燥させた干しだらや、塩漬けにして乾燥させた塩だらは、昔からノルウェーの特産物になっています。
【干しだらをつくる】
魚は水分を多く含むため変質が早く、そのままでは保存できません。そこで、水分を取り除くために、天日で干すようになったのです。
干すことで、長期に保存できるようになったばかりか、重さが6割以上軽くなることで運搬しやすくなりました。
干しだらを最初に作ったのは、8世紀後半から11世紀前半にかけて、北欧からヨーロッパ各地に進出していったヴァイキングだといわれています。
ヴァイキングが作っていたような、板のようにかちんかちんになるまで天日干しした鱈は、ストックフィッシュと呼ばれます。「ストック」と言うのは竿の意味で、2尾ずつ尾ひれのところで結び合わせた鱈を、竿にかけて干す伝統的な干し方から名づけられたといいます。
【干しだら交易】
ノルウェーのフィヨルドの入り口にある都市ベルゲンは14世紀から17世紀ごろまで、ドイツからきたハンザ同盟の商人が商店を開設して、干しだら(ストックフィッシュ)の売買を独占していました。
当時ヨーロッパ各地で復活祭前には肉を食べない食習慣がたくさん守られていました。そのため肉に代わるたんぱく質の供給源として干しだらは大量に売れたのです。
また、当時ヨーロッパからアジアに向けて長い航海に出発する船には日持ちする食料を積み込む必要がありました。それに干しだらはぴったりの保存食で、需要がますます高くなりました。(ハンザ同盟:13世紀から17世紀にかけて、北海・バルト海の北方貿易を独占して商人階級の利益を守るために成立した中世ドイツの都市同盟。) (復活祭:春分の後の満月直後の日曜日に、キリスト教会でイエスの復活を祝う祭り。イースターのこと)
【塩だら】
魚を天日で干していた時代を経て、塩干しが行われるようになりました。塩干しの鱈をクリップフィッシュと言います。「クリップ」というのは「岩場」の意味ですが、塩をした魚を岩場で干していたからだといわれています。
塩だらを作るには、タラに塩をかけるか塩水につけた後、自然乾燥させます。塩水につける方法では、塩の使用量が直接つける方法の4分の1で済みますが、それだけ魚の乾燥度は低くなります。
【干しだらの戻し方】
干しだらを調理するには、まず、柔らかく戻さなくてはなりません。厚みや乾燥具合、塩分濃度などによって違いますが、暖かい時期には、冷蔵庫で時々水をかえながら一昼夜かけて戻すのが一般的です。よく乾燥したストックフィッシュの場合は、数日かかることがあります。
かつてフランスの内陸の町、アヴェロンでは、ボルドーで仕入れた干しだらを舟につなぎ、川の水につけたまま運んでくるとちょうどよい戻し具合になっていたといいます。川の汚染がひどくなってからは、そんな方法は使えなくなりました。
【ノルウェーの伝統料理ルーテフィスク】
ルーテフィスクを作るには、まず干しだらをたたいて水につけ、4~5日間こまめに水をかえて戻します。
次に、鍋にカバやブナの木を焼いてできた灰と水を入れて沸騰させます。しばらくそっと置いて灰が沈んだらその上澄み液をそっとボウルに取り出します。
このボウルに戻したたらを3日間つけて、アクを抜きます。調理する3時間前にたらを取り出し、水洗いした後、よく茹でます。アツアツをバターとマスタードで味付けして食べるのです。
【ポルトガルの干しだら料理】
ポルトガルの漁師は16世紀ごろから、遠い北アメリカ沖まで行きタラ漁を行ってきました。とったタラは、ポルトガルの塩田で作られた塩で、塩干しされました。ポルトガル語でタラのことをバカリャウといいますがこれは生ダラではなく、塩干しだらのことです。
ポルトガルでは干しだらをつかってバカリャウ料理を作ります。戻して細かくちぎったバカリャウにマッシュポテトを合わせ、スプーンでラグビーボールの形に整えて油で揚げた「パシュティス・デ・バカリャウ(たらのコロッケ)」や、戻したバカリャウと細く切って油で揚げたじゃがいも、炒めた玉ねぎを合わせ、溶き卵でとじた「バカリャウ・ア・ブラ―ジュ」が代表的なバカリャウ料理です。
ポルトガルでは干しだらは日常的に良く使われる食材で、家庭の数だけバカリャウ料理があるといわれるほどです。

キッパー<イギリス>
【キッパーとは】
キッパーというのは、ニシンやタラ、鮭などの魚を塩漬けにして乾燥させたり燻製にしたもののことです。
【イングリッシュ・ブレックファースト】
イギリス人は、朝食に、ニシンのキッパーを焼いたものを食べます。丁度日本人が、朝食にアジの干物などを食べるのによく似ています。ただ最近は、朝食にキッパーを食べる習慣はすたれてきていて、ベーコンや卵料理、マッシュルームのソテーなどが中心になっています。

干しアワビ<中国>
【干しアワビとは】アワビは、フカヒレ、ツバメの巣、ナマコとともに、中国の「四大海味」の一つとされています。
干しアワビは、そのアワビを丸ごとゆでて乾燥させたものです。中国では昔から、山の幸も海の幸も乾燥させ、栄養分とうまみをぎゅっと閉じ込めた乾物を作ってきました。
【中華料理の干しアワビ】
アワビはそのまま調理するだけでなく、水煮の缶づめや干しアワビ(乾ばおという)にして保存されます。干しアワビは、生ものや水煮とは違った独特の風味があります。
明から清の時代にかけて、干しアワビや、干しナマコ、フカヒレなどの乾貨(乾物のこと)が重用されるようになりました。中国近海で取れる食材だけでは不足したため、日本からも輸入していました。鎖国をしていた日本にとっては、これらは外貨を稼ぐための重要貿易品でした。中国人が世界に広がって、アジア人のいなかった国でも中華街を作り、そこで中華料理を広められたのも、このような保存性の高い乾物を料理に利用する習慣があったからでした。
【干しアワビの作り方】
干しアワビは丸ごと熱湯で煮た後、あぶって湿気を取り去ってから天日に干します。生を直接干すのではなく、このように煮てから乾燥させたものを煮乾品といいます。
煮乾品は、作るのに2か月以上かかりますが生の時よりも重さが10パーセントほど軽くなり固く小さくなって運びやすくなります。その結果、長距離の運搬や長期の保存が可能になります。5,6年たったものはチョコレート色になってうまみが増すといわれています。
【干しアワビの料理】
干しアワビは十分に水分を吸収するように、丸ごと時間をかけて戻します。干しアワビにはコラーゲンが多く含まれているので、豚や鶏がらスープでとろけるように柔らかく煮込みます。この料理を作るのに、四日から六日もかかります。
広東料理の干しアワビの最も一般的な料理は、ハオヨゥバオビエン(アワビのオイスターソース煮込み)のほか、魚の浮袋と一緒に煮込んだチンインワーンバオやホンシャオミンバオがあります。また北京料理のジーマーバオフーゥなども、地域に限らず、香港をはじめとする高級中華料理店で食べられています。

ビーフジャーキー<アメリカ>
【ビーフジャーキーとは?】
ビーフジャーキーというのは、牛の赤身肉を塩漬けしてから干して、保存性を高めた食品です。
【チャルキーと呼ばれた干し肉】
北アメリカの先住民は、かつては、バッファロー(野生の牛)などの狩りが生活の糧でした。かれらも、つかまえた獲物の肉を保存するために、干し肉を作っていました。
作り方は、赤身肉を薄切りにして塩水につけ、歯の間にはさんで塩をなじませてから水分をとりきり、岩の上で天日干しするというものでした。
アメリカ大陸にやってきた初期のヨーロッパの移住者たちは、最初のうちはふるさとで食べていたような塩漬け肉を好みましたが、これは、持ち運ぶのに重く、作るのにも日数がかかりました。もっと手っとりばやく作れる保存食として、先住民から天日干しするチャルキーを教えてもらいました。
そして、チャルキーという言葉が変化して、ジャーキーと呼ぶようになったのです。
【カウボーイの携帯保存食】
カウボーイたちが草の豊富な土地で牛を飼育したり、育った牛を大きな町へうるために数日かかって移動するときに、食料として保存食が必要でした。
ステーキ用などの料理に使う肉をとったあとのくず肉は、編んだり、ねじったりして塊にして、塩をすりこみ、木の幹の上にひっかけて干し、干し肉にしたのです。
【ビーフジャーキーの利用】
カウボーイたちが天日に干してビーフジャーキーを作っていた時代を経て、現在は、ステーキソースなど調味液に浸してから、機械で脱水・乾燥させるという方法で工場生産され、商品として広く普及しています。ビーフジャーキーは、軽食や酒のつまみとして、そのままかじって食べることがほとんどですが、スープのだしや具にも利用されることがあります。