環境なのか、遺伝なのか


人間の様々な能力について「遺伝」と「環境」のどちらが影響を与えるのでしょうか?これは古くから議論されてきたものであります。

そこで考えてみると最近よく耳にするのが、「Jr」や「二世」といったもの。
スポーツ界をはじめとする、芸能界や政界にも二世の活躍する場が出てきています。
なので、そう考えてみるとやはり、人間の容姿・性格・才能といったモノを決めるものは、育った環境よりも遺伝のほうが重要なのではないか、と考えられます。

しかし、必ずしもそうとはいえないのではないか。

ここで皆さんも良く知っている、オオカミに育てられた2人の少女の例を挙げてみましょう。
1920年にインドの森で見つかった、カマラ(8歳半)とアマラ(1歳半)は、生まれて直ぐに人間の手を離れオオカミに育てられていました。
オオカミと始終同じように行動をしたためか、四足歩行を行い、舌を垂らしたままで何度も繰り返し吠えます。
飲み物はペチャペチャとなめて、食べ物は肉食に偏っていて、うずくまった姿勢で食べました。
このような行動ばかりではなく、体の形にまで野生生活の影響が現れ、掌・肘・膝・足の裏の皮膚が厚く硬いかたまりになっていたのです。
2人は見つかってから孤児院で育てられましたが、二足歩行するまでに6年もかかるなどとゆっくりとしか人間性は現れなかったそうです。




性格のように個人差をはっきり数字で表すことが難しい分野では、家計を調べても、伝わり方や遺伝の影響の大きさはわかりません。
そこで、双子を比べてみましょう。

まず、双子には一卵性二卵性の2種類があります。
一卵性は、1つの受精卵が発生の途中で偶然に2個に分かれたものです。
もともとは1人の子どもになるところが分かれたのだから、2人は遺伝的にはまったく同じということになります。
男になるか女になるか、もちろん同じ性になります。


二卵性は、同時に排卵された2つの卵子がそれぞれ受精したものなので、
同時におなかにいたとしても、遺伝的には年の違う兄弟と同じであり、すべての遺伝子の平均で半分の共通性があります。

上でも説明したように、一卵性の双子は、受精卵が二つに分かれることで生まれるので、2人は遺伝的にまったく同じです。
ということは別々の環境で育った一卵性の双子を調べれば、2人の違いは全て環境のせいになるので、はっきりと環境の影響がわかるのです。

双子の性格はほぼ2/3が遺伝によって、1/3が育児などの環境によって決まります。なので、多くが遺伝によって決まりますが、育児によっても性格は変わります。
これらのことがブシャード(T.J.Bouchard Jr.)による双子の研究によってわかりました。



よって、以上のことからわかることは、
容姿には遺伝子が深くかかわっているが、行動や性格の発達に関しては、生後まもなくからの子供のおかれた環境が極めて重要である
ということです。



  第一章