世界各国で
脳死による
臓器移植が行われていくにつれて、
日本でも脳死による臓器移植が始まりました。
この脳死による臓器移植は、新鮮な臓器を患者に移植することが可能ですが、
それでも移植用の臓器不足は解決されずにいました。
そこで今検討されているのが、
ヒトの臓器の変わりに動物の臓器を用いる「
異種移植」なのです。
異種移植の臓器提供者としては、
ヒトに近い
チンパンジーなどが候補に挙がりましたが、
繁殖が難しく、臓器がヒトのよりも小さいため臓器移植にはあまり向きませんでした。
そこで現在候補に挙がり研究が進められているのが、
ブタの臓器です。
しかし、この場合の問題点は、
免疫による拒絶反応が起こることです。
もともと、ブタとヒトとでは動物学的な種族が遠く離れているので、移植をすると直ぐに拒絶反応を起こしてしまいます。
これは、ブタのもつタンパク質の一種である「
ガラクトース糖鎖」がヒトの体内に入ると、
ヒトはガラクトース糖鎖を抗原として認識してしまうので、抗体が作られる際に免疫拒絶反応(補体反応)が起きてしまうためです。
*対策*
@ブタにヒトの補体反応を制御する遺伝子を導入する !成功!
Aブタのガラクトース糖鎖ができないように遺伝子を壊した「トランスジェニックブタ」を作る。 !成功!
このように、ブタからヒトへの臓器移植は実用化に向けて着実に進められています。
これから、拒絶反応を抑える研究が進めば、
一時的な中継ぎ
―例えば
患者の様態が悪化して緊急に臓器移植をする必要がある場合やヒトの臓器が得られるまでの継ぎ―
としてブタの臓器は珍重になるでしょう。
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