産業医の 別府 保男 先生にインタビュー


 川崎市にあります、新百合ヶ丘総合病院の産業医、別府保男先生に取材させていただきました。
お忙しい中、貴重な時間をありがとうございました。



1.主にどのような仕事をされていますか

 基本的には仕事をしている人たちが、健康で快適に仕事ができるように、体だけではく環境のチェックをする、専門性をもった医者が産業医と呼ばれます。 50人以上の会社には専属の産業医が必要です。

 電通事件と呼ばれる痛ましい事件も起きていて、国は様々な取り組み、対策を行っています。その一つがストレスチェックです。 そのストレスチェックで異常が見られた場合は、産業医のもとでメンタルと体の健康診断をを行います。

 また、過重労働(月に80時間を超えた時間外労働)の場合も同じことをします。その診断結果をみて、生活習慣(お酒やタバコなど)に対するコメントなどをします。 多い時期は1日3人の時もあります。



2.ストレスの講演ではどのようなことを話しますか

 まず、社会的にストレスを感じている人が増えていることや、労働がきっかけで自殺をする若い人が増えていることを話しています。 次に、職場でメンタルが不調な人がいると、組織のイメージダウンなど企業にも大きなデメリットがあることを話します。 最後に、電通事件の内容や、ストレスチェック制度などを話しています。



3.ストレスを感じるのはどのような場合ですか

 一番多いのが職場の人間関係です。次に多いのが、仕事の質や量についてです。 他にも、会社の将来性の問題や、昇進昇給についての問題がストレスを感じる人が多いです。

 また、心の病気になりやすいストレスは、就職、昇進で職場が移動した時、病気や怪我で生活リズムが変わった時、 出産のあとの子育てなどが挙げられます。最近では、サザエさん症候群やペットロス症候群でもストレスを感じる人がいます。

 癌センターにいた時に、膵臓をとる大きな手術をしたのですが、本人には全く意識が無いのに、体にストレスが多くかかり胃に穴が開くことがありました。 こんな感じで、ストレスは頭の認識だけでなく、体から感じることがあるので、気づかないときもあります。



4.カウンセリングなどをする時に大切にしていることはなんですか

 カウンセリングに限らず、一般の外来でも言えることですが、いかに話しやすい環境を作れるかがとても大切です。患者様が話せる雰囲気を醸し出さないといけません。そのため、社会の話題を話の中に入れると、診察をする上で大切な患者様の話をしてくれるようになります。



5.ストレスを溜めないために大切なことはなんですか

 90分ごとに休憩、休日に五感を使う、目を閉じてゆっくり呼吸するとストレスレベルを下げることができます。英語で表すと、Rest、Recreation、Relaxation、となるので、3つのRと呼ばれています。

 他には、ストレス耐性を上げることが大切とされています。20代〜30代にかけてストレスがたまりやすいのは、ストレス耐性がついていないからだとされています。 ストレス耐性が上がりやすい人の共通点は、困った時に「助けて」と言える人を持っている、仕事を離れた趣味を持っている、嫌いな人を作らないようにしている、などが挙げられます。



インタビューをさせていただいて・・・

 お忙しい中、現場での貴重なお話をありがとうございました。仕事関係のストレスについてわかりやすい説明や資料を提供してくださり、実際に体験したことなども交えて教えていただけたので、 より細かな情景が浮かびやすかったです。

 ストレスは頭では認識していなくても、気づかない内に身体が感じて体調を崩すこともあるので、周りの人のサポートが大切になると思います。 また、自分が何に対してストレスを感じているのかを認識する、3つのRを常に心がけることが大切だと学べました。

 職場の環境を整えたり、的確な私生活のアドバイスをしてくれる産業医の先生は、 患者様だけでなく職場で働く全ての人にとって、とても大切な存在になっているんだろうなと感じました。

写真は先生から直接いただきました。


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