衛星への活用
人工衛星アンテナを打ち上げる際に、従来の方法だと、アンテナ自体の体積が大きく、ロケットの肥大化などでコストが大きくかかってしまいます。
ロケットに乗せる際に、アンテナ自体は搭載せず、宇宙空間にロケットが達した際に、3Dプリンターで印刷します。そうすることで、アンテナ部分の費用・体積を他の設備に回すことができます。
提供:三菱電機
▲研究の構想図
提供:三菱電機
▲アメリカのマサチューセッツ州、ケンブリッジにあるMERL
私たちは、三菱電機の取り組み、「宇宙空間での3Dプリンティング」について7つの質問をしました。(実施日:2022年8月22日)
提供:三菱電機
▲取材の様子
なお、こちらのページでご紹介している質疑応答に関しまして、一貫して、MERLの研究者の方々個人の考えであって、三菱電機全体の総意ではございません。その点のご把握、よろしくお願いいたします。
Q.1
どういった研究に取り組まれていますか。
A.1
衛星を打ち上げた後に宇宙空間アンテナを作る研究に取り組んでいます。その中で、私たち二人(Avishaiさん、Billさん)は、印刷する際の樹脂開発・本体の3Dプリンターの研究開発をしています。
Q.2
どういった経緯でこのようなプロジェクトに取り組むことになりましたか?
A.2
MERLでは、よくブレインストーミングを行なっていて、かなり専門的な内容を話し合うのですが、その中で、航空宇宙工学の博士号を持っているAvishaiさんと3Dプリンティングやハード系に詳しいBillさんが「何か作れないか?」ということで、このプロジェクトが始まりました。
Q.3
地上で印刷することと宇宙空間で印刷することの違いはなんでしょうか?
A.3
やはり、地球と真反対の「無重力と真空」という点です。
宇宙では、普段、当たり前にできていることができず、宇宙空間での印刷は格段に難しくなります。
具体的には、普段、皆さんが使用している樹脂が宇宙空間では使用できなかったり、樹脂を出せても、その樹脂を固める方法がなかったりする点が難しい点です。
また、宇宙空間への打ち上げ・打ち上げ後を考慮して、全体の軽量化をしないといけないのですが、その際、ソーラー発電パネルなどは軽量化が図りにくいので、薄くするなどして、対応しています。
Q.4
サポート材造形中、押し出されたフィラメントが浮遊するのを防ぐため、中空部分(オーバーハング)とステージの間に印刷する支柱。が不要とあったのですが、これはどのような技術で可能にしているのですか。
A.4
宇宙空間では、中心からくるくる回していきながら液体のリジンを使って印刷します。その影響で、サポート材造形中、押し出されたフィラメントが浮遊するのを防ぐため、中空部分(オーバーハング)とステージの間に印刷する支柱。が不要になります。
メンバー制作
提供:三菱電機
▲研究の構想図
宇宙空間の印刷で、最も重要なこととしては、出す量やタイミングの問題です。アンテナを印刷する際には太陽の紫外線で固まる液体の樹脂を使用して、印刷します。そのため、出す量・タイミングはかなり大きな問題点になります。出す量が多いと、決めた形に固まらなかったりしてしまいますし、タイミングを間違えると変な形で固まってしまったりします。
イメージとしては、歯医者さんで行われる光を当てると固まる器具を想像してもらうと良いと思います。
Q.5
私たちは「未来プリンター」というタイトルのWEBサイトを作成しているのですが、貴社の思う「未来プリンター」とはどういったものですか。
A.5
最初に思いつくのは、「速い3Dプリンター」です。
今は、数時間とかかってしまっても、いずれ短時間で大量生産できるようになり、産業界に革命を起こすのではないでしょうか。
宇宙空間の3Dプリンターですと、「材料すらも宇宙空間で補う3Dプリンター」を思い浮かべます。
宇宙に材料を持っていくことにも、それなりにコストがかかってしまっているのが現状です。その改善策として、材料すらも宇宙ゴミなどから補給できる3Dプリンターが作られていくのではないかと考えています。
Q.6
開発を進めていく中で、どのような問題が障壁となりましたか。
A.6
現状の課題としましては、
1.圧倒的に知識が足りないこと
2.科学的結果の不一致
の2点が挙げられます。科学的結果の不一致というのは、液体樹脂が固まるまでの時間がずれていたりなどが挙げられます。しかし、これらの問題解決に取り組んでいるときが最も楽しいと思える瞬間なので、研究自体をとても楽しめています。
Q.7
最終的な「宇宙」×「3Dプリンター」の理想像としてはどういった姿を想像していますか。
A.7
私たちの研究が確立されることによって、この人工衛星アンテナを用いて、各地域の気候変動をよりきめ細かく、タイムリーに観測できるようになります。それが私の思う理想像です。