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衛星が抱える問題
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三菱電機の取り組み
近年、宇宙ビジネスの市場が急速に拡大しています。衛星サービス、ロケット産業などが、それに当てはまります。それが「3Dプリンター」で行われるとなったらどうでしょう。今回紹介する三菱電機の海外研究拠点であるMitsubishi Electric Research Laboratories (MERL)は、実際に衛星アンテナを「3Dプリンター」で研究・開発されている代表例です。

ここで紹介する研究は、 宇宙空間での3Dプリンターによる人工衛星アンテナの作成 です。簡単に説明すると、
  1. 宇宙空間に小型人工衛星を発射
  2. 人工衛星に搭載された3Dプリンターがアンテナを印刷
  3. 地球との通信が可能な人工衛星アンテナとして利用
という研究になっております。この研究のすごいところは、サポート材造形中、押し出されたフィラメントが浮遊するのを防ぐため、中空部分(オーバーハング)とステージの間に印刷する支柱。と言われる本来、空間上に印刷する際には必要な支えのようなものを使用しておらず、それを宇宙空間で行っている点にあります。

提供:三菱電機

▲研究の構想図

実際にこの研究を行なっているMERLに取材しました。
最初に、三菱電機の紹介です。三菱電機は電子デバイス、家電機器などの開発に加え、今回ご紹介したような「人工衛星」なども製造されています。次に、取材した「MERL」の紹介をしたいと思います。

MERLは、モデリング&シミュレーション、信号処理、AIの技術研究など様々なことが日夜、行われている研究所です。その中で、衛星の研究も行われています。

提供:三菱電機

▲アメリカのマサチューセッツ州、ケンブリッジにあるMERL

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取材の経緯
チーム一同は、記事を調べていく中で、「あるといいなぁ」と思い、「宇宙と3Dプリンター」というなんとも漠然とした内容で検索していました。そうしていたところ、三菱電機、MERLの記事に出会いました。最初は、ロケットの部品など部分的な面で使用しているくらいしか想像できず、記事をみて、言葉を失いました。そこで、大変失礼ながら、ご連絡させていただいたところ、快く取材を承諾していただきました。
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取材内容

私たちは、三菱電機の取り組み、「宇宙空間での3Dプリンティング」について7つの質問をしました。(実施日:2022年8月22日)

提供:三菱電機

▲取材の様子

なお、こちらのページでご紹介している質疑応答に関しまして、一貫して、MERLの研究者の方々個人の考えであって、三菱電機全体の総意ではございません。その点のご把握、よろしくお願いいたします。

https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2022/0517.html
▲今回メインで取材した三菱電機の記事のURLです。(外部ページ)
※下の英訳は、実際にMERLの研究者の方々に質問した英語の文章になります。
  1. どういった研究に取り組まれていますか。
    May we ask you to briefly describe the type of project you are working on?
  2. どういった経緯でこのようなプロジェクトに取り組むことになりましたか?
    May we ask you to explain how you came up with the idea of undertaking such a project?
  3. 地上で印刷することと宇宙空間で印刷することの違いはなんでしょうか?
    What is the difference between printing on the ground and printing in space?
  4. サポート材が不要とあったのですが、これはどのような技術で可能にしているのですか。
    I read that support materials are not required. What kind of technology do you use to make this possible?
  5. 私たちは「未来プリンター」というタイトルのWEBサイトを作成しているのですが、貴社の思う「未来プリンター」とはどういったものですか。
    We have created a website titled "Printer of the Future." What do you think the "printer of the future" is like?
  6. 開発を進めていく中で、どのような問題が障壁となりましたか。
    What were some of the obstacles you encountered during the development process? 
  7. 最終的な「宇宙」×「3Dプリンター」の理想像としてはどういった姿を想像していますか。
    What do you envision as the ideal image of "space" x "3D printer" in the end?

Q.1
どういった研究に取り組まれていますか。

A.1
衛星を打ち上げた後に宇宙空間アンテナを作る研究に取り組んでいます。その中で、私たち二人(Avishaiさん、Billさん)は、印刷する際の樹脂開発・本体の3Dプリンターの研究開発をしています。


Q.2
どういった経緯でこのようなプロジェクトに取り組むことになりましたか?

A.2
MERLでは、よくブレインストーミングを行なっていて、かなり専門的な内容を話し合うのですが、その中で、航空宇宙工学の博士号を持っているAvishaiさんと3Dプリンティングやハード系に詳しいBillさんが「何か作れないか?」ということで、このプロジェクトが始まりました。

Q.3
地上で印刷することと宇宙空間で印刷することの違いはなんでしょうか?

A.3
やはり、地球と真反対の「無重力と真空」という点です。
宇宙では、普段、当たり前にできていることができず、宇宙空間での印刷は格段に難しくなります。

具体的には、普段、皆さんが使用している樹脂が宇宙空間では使用できなかったり、樹脂を出せても、その樹脂を固める方法がなかったりする点が難しい点です。

また、宇宙空間への打ち上げ・打ち上げ後を考慮して、全体の軽量化をしないといけないのですが、その際、ソーラー発電パネルなどは軽量化が図りにくいので、薄くするなどして、対応しています。

Q.4
サポート材造形中、押し出されたフィラメントが浮遊するのを防ぐため、中空部分(オーバーハング)とステージの間に印刷する支柱。が不要とあったのですが、これはどのような技術で可能にしているのですか。

A.4
宇宙空間では、中心からくるくる回していきながら液体のリジンを使って印刷します。その影響で、サポート材造形中、押し出されたフィラメントが浮遊するのを防ぐため、中空部分(オーバーハング)とステージの間に印刷する支柱。が不要になります。

メンバー制作


▲印刷のイメージ図

提供:三菱電機

▲研究の構想図

宇宙空間の印刷で、最も重要なこととしては、出す量やタイミングの問題です。アンテナを印刷する際には太陽の紫外線で固まる液体の樹脂を使用して、印刷します。そのため、出す量・タイミングはかなり大きな問題点になります。出す量が多いと、決めた形に固まらなかったりしてしまいますし、タイミングを間違えると変な形で固まってしまったりします。

イメージとしては、歯医者さんで行われる光を当てると固まる器具を想像してもらうと良いと思います。

Q.5
私たちは「未来プリンター」というタイトルのWEBサイトを作成しているのですが、貴社の思う「未来プリンター」とはどういったものですか。

A.5
最初に思いつくのは、「速い3Dプリンター」です。
今は、数時間とかかってしまっても、いずれ短時間で大量生産できるようになり、産業界に革命を起こすのではないでしょうか。

宇宙空間の3Dプリンターですと、「材料すらも宇宙空間で補う3Dプリンター」を思い浮かべます。
宇宙に材料を持っていくことにも、それなりにコストがかかってしまっているのが現状です。その改善策として、材料すらも宇宙ゴミなどから補給できる3Dプリンターが作られていくのではないかと考えています。

Q.6
開発を進めていく中で、どのような問題が障壁となりましたか。

A.6
現状の課題としましては、

 1.圧倒的に知識が足りないこと 
 2.科学的結果の不一致 

の2点が挙げられます。科学的結果の不一致というのは、液体樹脂が固まるまでの時間がずれていたりなどが挙げられます。しかし、これらの問題解決に取り組んでいるときが最も楽しいと思える瞬間なので、研究自体をとても楽しめています。

Q.7
最終的な「宇宙」×「3Dプリンター」の理想像としてはどういった姿を想像していますか。

A.7
私たちの研究が確立されることによって、この人工衛星アンテナを用いて、各地域の気候変動をよりきめ細かく、タイムリーに観測できるようになります。それが私の思う理想像です。

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取材を終えて
宇宙空間での印刷と聞き、かなりの将来性を感じていました。また、MERLの方々とお話しさせていただく中で、宇宙への探究心をひしひしと感じました。私は、宇宙が好きで、将来は、このような宇宙関連の印刷物というものも将来、作れるように活動していきたいです。
三菱電機、 MERLの皆様、取材を引き受けていただきありがとうございました。
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参考文献
前:住宅への活用
セレンディクスでは、30年の住宅ローン問題に対応するため、3Dプリンター住宅の研究・開発を行っています。
医療への活用:次
サイフューズでは、組織・臓器の印刷を可能にした、「バイオ3Dプリンター」を開発しています。

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