食品を冷凍する目的
微生物増殖の抑制
冷凍食品開発の背景には、食品の安全性の問題がありました。
微生物が食品中の諸成分を分解して発酵させると、食品が腐敗していきます。 そのため、食品の質を守るには、微生物の活動や増殖を抑える必要があったのです。
では、どうして食品を冷凍すると微生物の動きを抑制できるのでしょうか?
微生物の活動には水分が不可欠です。 ところが冷凍することで、食品中の水分は凝固して氷結晶となり、微生物は水分を得られなくなります。 すると、微生物は活動できなくなるのです。
食中毒の原因となるアニサキスなどの微生物は、10℃以下になると増殖しにくくなり、0℃でほとんど活動できなくなります。 また、低温に耐性のある微生物も、-10℃以下では活動しなくなります。
多くの微生物は10~60℃の温度帯で活発に動くので、常温では食品が微生物の温床となってしまいます。 乾燥処理と同じく、水分を減らすことで微生物の増殖や活動を抑制して、食品を守っているのです。
劣化防止
乾燥処理と同じ原理で微生物から食品を守っているのは事実ですが、食品から水分が抜けてしまうと、パサついた食感になってしまいます。 これでは品質を守れていません。 また、食品の酸化も、劣化に繋がります。 こうした問題を解決するためにも、冷凍する必要があったのです。
その他の利点
食品の腐敗を抑制することが冷凍することの最大の目的です。 しかしそれだけでなく、品質保持期間を長くするという利点もあります。 具体的には、冷凍する温度が低ければ低いほど、味や食感などをより長い期間維持することができるのです。 そのため、冷凍食品の流通温度は、Codex(コーデックス)規格で-18℃以下が基準とされています。
※Codex規格とは、消費者の健康を守るために必要な、食品の管理に課する国際的な規定です。
食品の安全性や味、食感などをキープするために、冷凍するという手段が生まれました。 保管時だけでなく、輸送時にも冷凍技術が用いられるようになりました。