食品ロス削減技術
食品ロス問題の解決に貢献する冷凍技術
急速冷凍技術により、食品の質を長持ちさせることが可能になりました。 よって、現在深刻な問題となっている食品ロス問題への対応策として、急速冷凍技術のさらなる普及が挙げられています。 食品の安全性を守るために開発された冷凍技術は、今ではグローバルな問題の解決にも応用されるようになったのです。
ここでは、冷凍技術がいかにして食品ロス削減に貢献しているのかを取り上げています。
食品ロスとは
そもそもみなさんは食品ロスとは何か知っていますか? ここでは食品ロスとそれに対する企業の取り組みについて見ていきましょう。
食品ロスとは、まだ食べられるのに廃棄される食品のことを言います。 消費者庁の調査によると日本の食品ロスの量は年間600万トン、毎日大型トラック約1640台分が破棄されています。 日本の食品ロス量年間600万トンのうち、事業系は324万トン、残りの200万トンは家庭から出されます。
※「その他」には、主に食品小売業や卸売業などが含まれます。
食べられる食品が捨てられるなんて、もったいない・・・。
冷凍食品は、食品ロスが少ないものとして注目されています。 今回はインタビューに回答していただいたニチレイの食品ロスに対する取り組みを参考に紹介します。
食品ロスの原因とは
どうして食品は食べられなくなってしまうのでしょうか? 主に2つの要因があります。
- 【腐敗】微生物が活動、増殖することで食品の成分が分解され人体に有害なものになってしまう。
- 【劣化・変質】酵素、細胞の活動、酸素や光、水分の変化によって味や見た目、匂いに問題がある状態になってしまう。
どうして冷凍食品が食品ロスを減らすのに貢献するのか?
微生物を排除
微生物を排除することで、品質を長持ちさせることができます。
腐敗の原因になる微生物が発生しない製品として缶詰・レトルト、燻製などの製品が挙げられます。 缶詰は密封して微生物を加熱殺菌しており光や酸素を遮断できます。 燻製はいぶす際に微生物を殺菌し、いぶすことでできた樹脂膜で外部からの微生物をブロックします。
水分をコントロール
水分量を調節することも、品質保持に繋がります。
微生物が活動するためには水分が必要です。 食品を乾燥させることで食品中の水分を減らすことができます。 しかし、塩漬けや砂糖漬けは水分量が多めでも腐敗しにくいです。 これは水分の中にも、微生物が利用できる水(自由水)と利用できない水(結合水)があるためです。 塩漬けや砂糖漬けでは食品中の自由水が塩や砂糖と結びついて結合水になるため、微生物の働きが抑えられます。
自由水と結合水の割合を計る「水分活性」という指標(自由水100%で水分活性1.00)があります。 食中毒などを招く多くの菌は水分活性0.9以下、カビは0.8以下では生存できません。 水分活性を0.5以下に抑えることで、食品の腐敗を招く微生物の増殖を防ぐことができます。
このように、冷凍食品は食べ物の劣化・腐敗がしにくいものとなっているのです。
徹底した温度管理
温度管理も品質管理の一環です。
温度をコントロールして長持ちさせる保存法は、冷蔵、冷凍の2つがあります。 冷凍食品は品質を変えずに長期間保存することができます。
冷凍 | 自由水を凍結させ、-15℃以下の保存で微生物の活動をほぼ停止。 -18℃以下で食品の酸化や酸素の働きを抑える。 しかし保存に電力が必要。 |
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冷蔵 | 保存温度を下げて微生物の働きを抑える。 しかし微生物や酸素などの活動を完全には抑えられないので生鮮食品の保存時間は短い。 保存に電力が必要。 |
冷凍食品は温度・水分のコントロールと微生物の排除によって長持ちするということが分かりました。 長期保存が可能なため、食品ロスを増やさないのに効果的です。 また、缶詰などは災害時の為に長期的に保存することができます。