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"微生物の抗生物質発酵とは?新たな薬の種探しと医療の発展"

Daiichi Sankyo くすりミュージアム

https://kusuri-museum.com

【場所】東京都中央区日本橋 【見学日】2019年1月13日


細菌による感染症にかかると医師から抗生物質を処方されることがあります。 抗生物質は細菌を退治する薬(他の微生物の生育を抑制したり殺したりする物質)なので、体が辛いときに役立ったと実感する薬の一つではないでしょうか?

実は抗生物質は、微生物と発酵が関わる医薬品の代表的なものです。さらに抗生物質以外にも、発酵によってできた有名な医薬品には抗ガン剤や免疫抑制剤、消化薬などがあり、病気に苦しむ多くの人々の命を救い医療の発展に大きく貢献してきました。
私たちでも見学可能な製薬会社の研究所はなかったので、創薬企業が集まる東京日本橋にあるDaiichi Sankyoくすりミュージアムを見学してきました。

自然界から人のためになる「くすりの種」を探す



くすりミュージアムの展示に「くすりの種」コーナーがありました。自然界に存在する様々なものから核となる物質を発見し、医薬品開発に利用しているのです。
くすりの種になる物質の一部として、青カビや麹菌、大麦、ヘビなどが紹介されていました。
健康を支える薬には、身近なものの中にある微生物の力と発酵技術が大きく関係しています。


豆知識@


2015年、大村 智博士とウィリアム キャンベル博士が『線虫の寄生で引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見』でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
大村博士は土壌サンプルから分離した多くの放線菌を培養し、抗菌活性を有する化合物を生産する株を選び、キャンベル博士によりこの菌が生産する物質に寄生虫を殺す作用があることが見出されました。
この薬が実用化され、多くのアフリカの人々を寄生虫感染症による失明から救いました。
微生物の物質生産能力を利用するという発酵技術で、人類の健康に貢献しました。


小さな微生物が醸す力が奇跡の薬に



人類は長い間、細菌の感染で起こる病気(感染症)に苦しめられ、多くの命が失われてきました。
第一次世界大戦に従事したイギリスの医師で細菌学者のアレクサンダー フレミング博士は、戦場でケガをした兵士が細菌に感染し、全身に広がって敗血症で亡くなるのを数多く目撃しました。

1929年、フレミング博士は細菌(ブドウ球菌)を培養していたシャーレに、偶然落ちた青カビの周囲だけブドウ球菌が生育していない不思議な現象に気付きました。これに興味を持ち、生えていた青カビから細菌を殺す物質(抗生物質)を取り出すことに成功したのです。これが世界初の抗生物質「ペニシリン」です。
ペニシリンは感染症等に絶大な効果を発揮し、抗生物質発酵という新たな発酵の分野が始まりました。

豆知識A


ペニシリンは別の研究者によって大量生産が可能になり、1944年のノルマンディー上陸作戦までには広く使用され、戦場で負った傷が原因で何万人もの人が亡くなることを防ぎ「奇跡の薬」とも呼ばれました。
この功績から1945年、フレミング博士は量産に成功した研究者たちと共にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。



まとめと感想


現代の医薬品研究で「微生物」や「発酵」というキーワードは重要なテーマといわれ、世界中の研究者が新たなくすりの種を発見しようとしています。 最先端の医薬品の技術開発が求められるので競争が激しいですが、病気やケガで苦しむ人々の痛みや辛さを少しでも早く取り除き、助けたいという研究者たちの努力が、昔も今も私たちの健康を支えています。

くすりミュージアムは、病気や健康に役立つ薬の体へのはたらき方や医薬品の仕組み、透明な人体模型で見る薬の動きなど、見る・聞く・触れることで楽しく学べる体験型施設でした。
医薬品の発展には、これからも微生物の力と発酵技術が重要だと分かりました。