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"発酵が醸す醤油の風味と香りを調べよう"

キッコーマン もの知りしょうゆ館(野田工場)・御用蔵


https://www.kikkoman.co.jp/enjoys/factory/noda/index.html

【場所】千葉県野田市  【見学日】2019年3月27日

  


日本伝統の発酵調味料「醤油」は、和食の味の基本です。
家庭科の授業で、主に煮物料理に「さ(砂糖)、し(塩)、す(酢)、せ(醤油:せうゆ)、そ(味噌:みそ)」の順番で味付けをすると、味がしみ込みやすくておいしくなると習いました。
今は醤油の種類が多くなり、食材や調理方法によって醤油を使い分ける人も多いですね。

私たちは、醤油生産量1位の千葉県にある「キッコーマン野田工場」と「もの知りしょうゆ館」、隣接する「御用蔵(御用醤油醸造所:宮内庁に納める醤油の専用醸造所)」を見学しました。
醤油の醸造には微生物(麹菌・乳酸菌・酵母菌)が共生発酵する力で、うま味・酸味・風味などが複雑に醸し出されます。そのはたらきを知るとみなさんもさらに興味が出て、色々な醤油を試したくなると思います。

工場見学の流れと内容



はじめに製造工程をビデオ鑑賞し、解説を聞きながら工場見学しました。

@ 原料(大豆・小麦・塩・麹菌)について
 大豆 アメリカ・カナダ産
 小麦 アメリカ・カナダ産+微生物(麹菌・乳酸菌・酵母菌) 
    ※キッコーマンでは麹菌に「キッコーマン菌」を使用しています。
 塩  メキシコ産

<微生物の主なはたらき>
  麹 菌  たんぱく質をアミノ酸に、でんぷんをブドウ糖に分解し酵素を作り出す。
       →うま味成分の増加
  乳酸菌  乳酸や有機酸(酸性の有機化合物)を作り出す。
       →酸味や味の深みの増加
  酵母菌  ブドウ糖を素にアルコールを生み出す。アルコールは最後に火入れ(加熱)するとなくなります。
       →有機酸と反応することによる香り成分の増加

A 製麹(せいきく:醤油の素になる醤油麹づくり)について
 <醤油麹づくり>
 (1) 大豆を蒸す 大豆を高温で蒸すことでたんぱく質の性質を変化させ、麹菌と反応しやすい状態にする。
 (2) 小麦を砕く 小麦を砕くことででんぷんを変化させ、麹菌の酵素のはたらきを受けやすい状態にする。
 (3) 麹を育てる 大豆と小麦を混ぜた物にスプレーで麹菌を加え、製麹室で3日ほど醤油麹を育てる。
         菌の活動を活発にするため、室内を蒸し暑くしている。

B 発酵・熟成(微生物の力でもろみが変化)について
 <仕込み>
 醤油麹に食塩水を加え、タンクに移す。
 食塩水を加えた醤油麹のことを「もろみ(諸味)」という。
 食塩水を加えたところで麹菌の繁殖が止み、麹菌の酵素がはたらき始める。

 <発 酵>
 上記の酵素によって発酵し、うま味・酸味・香味・色味を生み出す。
 また、発酵を順調に進めるため、もろみの状態に応じて空気を送り込む撹拌という作業を行う。

 <熟 成>
 味や香り、色ができてくると熟成期に入り、微生物のはたらきが活発でなくなる。
 後に全体が調和のとれた状態に仕上がる。

C 圧搾(もろみを布に包み搾る)について
 <圧 搾>
 熟成したもろみを、3つに折った長い布(濾布:ろふ)に連続して包み詰める。
 布を積み重ねると、もろみ自体の重さで醤油がにじみ出てくる。
 その後、プレス機で積み上げたもろみに圧力をかけ醤油を搾り出す。
 ※このとき取り出した醤油を、キッコーマンでは生醤油(なましょうゆ)といいます。

 もろみから醤油が抜けると醤油粕(しょうゆかす)になる。
 ※キッコーマンの醤油粕は、家畜の餌や紙製品に100%再利用されています。


豆知識@


濾布(ろふ)について

濾布を広げると、なんと!長さは東京スカイツリー約4本分です。
また、折りたたむと、高さはビル3階相当になるそうです。
もろみを布に包み圧搾する機械は、世界一ということでした。


D 火入れ・容器詰め
 <火入れ>
 生醤油に熱を加えることによって、殺菌と同時に色・味・香りを整える。
 酵素のはたらきを抑え、品質を安定させる。
 

※キッコーマンもの知りしょうゆ館パンフレットの工場見学コース参考(2019.3)



もの知りしょうゆ館について



工場内にある「もの知りしょうゆ館」は醤油の歴史・マメ知識・環境保全コーナー・ミニライブラリーなど、自由に見ることができます。
他にも、醤油味のソフトクリームや醤油煎餅を自分で焼いて食べられるカフェ、御用蔵で醸造された御用蔵醤油を購入できる売店もあります。
子どもから大人まで楽しめるミュージアムでした。


※キッコーマンもの知りしょうゆ館パンフレットの館内施設参考(2019.3)



御用蔵について



御用醤油醸造所(通称:御用蔵)では、厳選した国内の大豆・小麦・塩を原料に、自然の気候の中、蔵内の仕込み室で杉の木桶を使い、一年かけてもろみをじっくり発酵・熟成させます。
現在も宮内庁にお納めする醤油を醸造しています。
江戸時代から続くキッコーマンの醸造技術は、第二次世界大戦下、物資不足のため政府による戦時の品質規格が定められる中、御用蔵では皇室御用達として丸大豆の醤油づくりを続けることができました。
伝統的な醸造技術を途切れることなく伝承し、現代に受け継いでいます。

また、蔵内は自由に見学できます。昭和14年ごろ実際に使われていた醤油づくりの道具・装置の展示、麹室(こうじむろ)の再現、圧搾などの伝統的作業を再現した映像を見ることができました。


※キッコーマン御用蔵パンフレット参考(2019.3)



豆知識A


御用醤油醸造所は「近代化産業遺産」

平成19年度の千葉県野田市の醸造関連遺産として、経済産業省から
「近代化産業遺産(醤油)」に登録されました。



まとめと感想


醤油は甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の五味を持つ発酵調味料なので、和食の味付けの要です。
そのおいしさがたくさんの人々に伝わり、今は世界の料理にも広く使われるようになりました。
私たちは工場見学の際、最寄りの野田市駅で降車しましたが、電車のドアが開いた瞬間、大豆を蒸したような、小麦を焙煎したような、醤油のような複雑な香りが漂ってきて驚きました。江戸時代から続く「しょうゆのまち野田」も、きっとこのよう感じだったのかなと想像しました。

それから工場では、醤油粕のにおいを初めて嗅いだり、迫力ある圧搾機を間近で見ることができ、最新の醤油づくりを体感できるものでした。
醤油独特の奥深い味わいは、3種類の微生物がそれぞれの役割を果たすことで生み出された発酵の産物であるということが分かりました。