20世紀初頭 各国で児童福祉政策本格化の機運高まる
前述のように、思想的には「子どもの権利」の発想が生まれてきた一方で、現実的には、社会の資本主義的発展にともなって、子どもは大人の所有の対象として扱われることも多く、児童労働や児童売買が横行していました。1833年にはイギリスにおいて「工場法」が成立し、9歳未満の児童労働の禁止と教育の機会を与える義務が定められ、一定の保護はなされました。しかし、その後の19世紀末においても、子捨てや子殺しはあり、多くの子どもが工場や農場で働かされたり、戦争や災害時には見捨てられたりして命を落とすことも少なくありませんでした。
こうした状況下において、子どもの幸福や福祉を訴える運動が盛り上がりを見せていき、「子どもの人権」という考えが生まれていきました。実際に、1904年にはフランスで児童福祉制度が発展し、イギリスでは1906年に「児童法」(Children’s Act)が成立しました。同法では、浮浪児やぐ犯少年(非行などが認められ、犯罪を犯す恐れのある少年)の保護、児童虐待防止のための保護手続きなどについて定められています。アメリカでは1909年に児童保護のための第一回ホワイトハウス会議が開かれるなど、欧米諸国においては、子どもの福祉や保護の政策が取られていきました。