第10条別々の国にいる親と会える権利
- 前条1の規定に基づく締約国の義務に従い、家族の再統合を目的とする児童又はその父母による締約国への入国又は締約国からの出国の申請については、締約国が積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱う。締約国は、更に、その申請の提出が申請者及びその家族の構成員に悪影響を及ぼさないことを確保する。
- 父母と異なる国に居住する児童は、例外的な事情がある場合を除くほか定期的に父母との人的な関係及び直接の接触を維持する権利を有する。このため、前条1の規定に基づく締約国の義務に従い、締約国は、児童及びその父母がいずれの国(自国を含む。)からも出国し、かつ、自国に入国する権利を尊重する。出国する権利は、法律で定められ、国の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の権利及び自由を保護するために必要であり、かつ、この条約において認められる他の権利と両立する制限にのみ従う。
第10条には異なる国々に別れてしまった親子がもう一度会うための出国と入国についての基本的な取決めが書かれています。親子が別れてしまう理由の具体例としては、戦争や内戦はもちろんのこと、甚大な被害をもたらす災害の影響による難民化、強制的に退去させられたパターン、国境線の変更による不可抗力的な居住地区の分割などが当てはまる代表例と言えます。なお、本条は条約前文の「家族」の定義である「社会の基礎的な集団」かつ「家族のすべての構成員、特に、児童の成長及び福祉のための自然な環境」と、第9条一項の国家には「(『子どもの最善の利益』に照合して必要性のある時を除いて)子どもが親の意思に反して別れさせないことを保障する義務があること」という2つの前提に基づいて立脚されています。第9条の詳細に関しては、該当ページを合わせてご参照ください。
条約に定められている詳しい内容
一項では、別れてしまうことになった家族が再び一緒になるための出入国の申請が「積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱う」べきであると求められています。「積極的」というワードは、「子どもの最善の利益」を考えた上で、どうしても認めることのできない絶対的な理由がある場合を除き、子どもの出入国の希望の拒否はできないということであると捉えることができます。そして、「人道的かつ迅速」という部分は、やはり子どもの出入国の希望を叶え、「子どもの最善の利益」を追求するために最大限努力するべきということをさしているといえます。なお後半にある「悪影響」というものには、子どもの出入国の希望が、在留資格の認可や更新の際に不利益をもたらしてしまう場合などが該当します。出入国の希望は子どもが有する守られるべき権利であるため、万一にもこういったことが起きないようにすることも国家に求められていることであると言えます。
二項では、「(「例外的な事情がある場合を除くほか」)定期的に父母との人的な関係及び直接の接触を維持する権利」(第9条三項で一度述べられている権利)がたとえ国境を超えて家族がバラバラな場合にも保障されるべきと定められており、国家には子どもとその親の再会のための出入国の権利を尊重することが義務付けられています。
ここで1つ気になるワードとして、「例外的な事情がある場合を除くほか」というものがあります。この「例外的な事情」というのは、「『子どもの最善の利益』に反する場合」や「そもそも親がどこにいるかわからない場合」、「親がいるとされる国との国交がない、もしくはなんらかの理由で断絶中の場合」や「本項の『法律で定められ、国の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の権利及び自由を保護するために必要であり、かつ、この条約において認められる他の権利と両立する制限』を著しく逸脱している場合」などといったごく極めて限られた状況のみを指し示しています。なお、ここでの「自国」の定義には子どもが持っている国籍の国である「国籍国」はもちろんのこと、彼らがその時点で住んでいる「定住国」も含まれているとされています。