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子どもの権利条約 18. 子どもの養育はまず親に責任

18子どもの養育はまず親に責任

  1. 締約国は、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するために最善の努力を払う。父母又は場合により法定保護者は、児童の養育及び発達についての第一義的な責任を有する。児童の最善の利益は、これらの者の基本的な関心事項となるものとする。
  2. 締約国は、この条約に定める権利を保障し及び促進するため、父母及び法定保護者が児童の養育についての責任を遂行するに当たりこれらの者に対して適当な援助を与えるものとし、また、児童の養護のための施設、設備及び役務の提供の発展を確保する。
  3. 締約国は、父母が働いている児童が利用する資格を有する児童の養護のための役務の提供及び設備からその児童が便益を受ける権利を有することを確保するためのすべての適当な措置をとる。

第18条の根底には、条約全体で度々登場する「子どもの最善の利益」という概念を追い求める条約全体の姿勢が流れているといえます。大きく分けると、親の子どもの育て方と親が作る家庭環境を重視する考え方、そして同時に家族への国家機関を通じた国単位の保護や支援を通して、子ども自身の健全な成長や発達を最大限助けようとする姿勢が骨格となっています。子どもをしっかりとした人物に成長させることや豊かな精神の形成、発展をさせていくこと、そして子どもの発達に大切な意味を持つ言語・宗教・思想などといった文化の自由の保障という面などで、親と彼らによって作られる家庭環境は本条で極めて重要かつ深い意味を持つものとして規定されています。加えて、子ども自身は当然生まれてくる環境を選ぶことができないので、そういった視点でも締約国の国内における家庭政策の上でこの条文は重視されるべきものです。

本条全体では、子どもの養育に関する最も大きな責任が親にあること、そして国家はその責任が完遂されることを扶けるべきであることの2つが大きなテーマであるといえます。なお、本条は第3条二項や第5条、第14条二項、第27条二項などの条文とも深く密接に関係しています。

一項

一項では、大きく分けて、重要な表現が3つ登場します。1つ目は、「児童の養育及び発達についての第一義的な責任」を子どもの親が持っているということ。2つ目は「児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有する」ということ。3つ目は、「児童の最善の利益」が「基本的な関心事項となる」ことです。それぞれ詳しく紹介していきます。

1つ目は、児童を育てる上で、子どもの親が最も大きな責任を持っているということを意味しています。この「責任」は法律を守るような重大な意味での「責任」です。親以外の人物や国家権力、行政機関などといったものがこの「責任」を果たせないようにしようとしたり、脅かしたりすることはもちろん禁止されています。またそれに加えて、例えば親の育児にかかわる一切のことに「正当でしっかりとした理由」を持たずして介入することも同様に固く禁じられているといえます。ここから発展して、締約国には、この「正当でしっかりとした理由」を持たざる介入がされそうになった時にそれをしっかりと防ぐ措置(措置の具体例は第8条や第11条、第16条、第35条などが詳しいです)を講じるべきとされています。ただ内容に基づく例外規定として、もし「正当でしっかりとした理由」(親が子どもの育児を放棄していたり、虐待している場合、もしくはそもそも育てることができない場合など)がある場合には行政機関などの機関が国単位の対策をもってして介入すべきとされています。(第3条二項、第9条一項、第19条、第20条や第21条などにこのケースの場合の具体的な介入についての規則があります。)

子どもの親が大きな責任を持つことに関する図

次に、2つ目は、子どもの育児に関して親の両方が「共同」で責任を持っているということです。なおこれは「役割」という視点では必ずしも親の両方が全く同等の役割を担う必要はないとされていますが、上述した「責任」という目線ではお互いが全く同じ重さの「責任」を負う必要があるということを意味しています。なお、この責任は父母双方が子どもを育てる時点で結婚しているか、否かによらずにつきまとうものであるとされています。

そして、3つ目は、親は育児の上で「子どもの最善の利益」を基本的に重視すべきであるということです。これは「子どもの最善の利益」の規定(第三条に基づくもの)がしっかりと親によっても最大限勘案されるべきということを意味しています。

子どもの親の責任に関する図

最後に4つ目は、上で述べた3つのことが適切に果たされるように国家には「最善の努力を払う」責務があるということです。これは一言でいうとやや弱めな表現といえます。これに関してはそれだけ親と子どもの共同空間である家庭と国家の関係が複雑かつデリケートで、あまり強い表現に出ることがよくないということを表しているといえます。

二項・三項

二項と三項では行政機関や国家機関などの国単位での「保育サービス・施設を含む子育ての援助」についてが書かれています。

二項の「適当な援助」は例えば、子育て・育児に関する学校教育や子育て相談の受付、家事や育児関連の様々なサービスの提供などがあたるといえます。なお、二項後半の「児童の養護のための施設、設備及び役務の提供の発展を確保する。」という記述は、子育てを助ける機関・施設などが行政機関による公的なものに限らず、民間の組織、団体によって運営されるものも該当しているということを表していて、さらに条約ではそれを推奨しているという意味合いをも持っています。

三項では、国家は「父母が働いている児童が利用する資格を有する児童の養護のための役務の提供及び設備からその児童が便益を受ける権利を有することを確保するためのすべての適当な措置をとる。」必要性があると定められています。ここでは「利用する資格を有する」という部分が重要であり、「父母が働いている児童」全てがサービスや施設を利用できる権利を一様に有しているわけでは決してないということです。では、この「資格」というものはいったい何なのかという疑問がわきます。実際のところ、現状としてこの言葉の定義は条約締約国の判断、考え方にそのすべてが委ねられています。もちろん、その判断の上で「子どもの最善の利益」は最も重視されるべきものであるということは他の条文の考え方と変わりません。また、「すべての適当な措置をとる。」という部分も他の条文と同じように条約締約国が最も大切にすべき考え方です。

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