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権利の歴史

2020年 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック

2020年3月11日、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)を宣言しました。新型コロナウイルス感染症の拡大によって各国で取られた対応策によって、子どもの権利条約で保障されている権利が制限されることもありました。同年4月8日には、国連子どもの権利委員会がパンデミックによる子どもたちへの影響に懸念を表す声明を発表しました。4月16日には国連が新型コロナウイルスの影響に関する報告書を発表し、アントニオ・グテーレス事務総長は子どもへの影響に関するビデオメッセージの中で、「子どもたちの生活は壊され、危機に瀕している。」としました。メッセージでは、子どもたちが特に影響を受けている分野として、「教育」「食料」「安全」「健康」を挙げ各国の政府、リーダーに取り組みを促しました。公共の福祉のために、子どもの権利が制限されることはありますが、制限は最小限でなくてはなりません。

「教育」の分野で子どもたちが受けた影響の1つは、世界中で取られていた休校措置です。遠隔授業が提供されてるケースもありましたが、インターネットや、テレビ・ラジオ、電気など、遠隔授業の提供に必要なインフラの整備状況には国によって差があり、学校に通えない状況に置かれていた子どもたちも大勢いました。日本においても、2020年3月2日から一斉休校要請が行われ、子どもたちが学校で授業を受けることができない状況が続きました。

「食料」の分野では、各国で取られたロックダウンや休校などの措置に伴って、学校給食が停止され、子どもたちが栄養失調の危機に陥るなどしました。日本を含む多くの国で、学校給食は子どもたちの栄養や成長を支えています。また、パンデミックによって起きた経済危機によって、収入が低下すると、特に低中所得国では食料品の購入などができなくなる可能性があります。

「安全」の分野では、休校措置などによって子どもが家庭にいることが多くなり、パンデミックによる家庭内ストレスの増加に伴って、家庭内暴力の被害者となることや、貧困の拡大による児童労働の拡大などが懸念されました。国際労働機関(ILO)が2021年に発表した報告書では、2020年の児童労働に従事する子ども数が2016年より増加し、推定で約1億6,000万人にのぼるとされました。同報告書によると、年々減少していた児童労働者数が増加に転じるのは20年ぶりのことです。他にも、インターネットの使用時間の増加に伴う、インターネットを通じた子どもへの性的搾取いじめの増加などが懸念されました。

「健康」の分野では、家計所得の低下による医療費や食料費の削減に伴って、子どもたちの健康に悪影響を及ぼしたり、多くの人々が石鹸と水による手洗いにアクセスできないなどの事態が懸念されました。また、各国でポリオや麻疹などのワクチンプログラムが停止されたり、医療へのアクセスが難しくなるなどもしました。

また、上記以外にも、4月8日の子どもの権利委員会による声明では、子どもたちの「休息、余暇、レクリエーションおよび文化的・芸術的活動に対する権利」に対する懸念が表され、パンデミックに関する意思決定における子どもの意見表明権の尊重が求められるなどしました。感染症のパンデミックという非常時においても、できる限り「子どもの最善の利益」が優先して考慮され、子どもにまつわる事柄においては子どもの権利が最大限尊重されることが求められました。

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