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現状と改善策

貧困

現状

「子どもの貧困」は現在日本における子どもを取り巻く問題の中でも代表的なものとなっています。厚生労働省が3年に1度実施している国民生活基礎調査の2018年のデータでは、日本社会では「子どもの貧困率」が13.5%であり、実に約7.4人に1人の子どもが貧困状態に置かれているといえます。なお、「子どもの貧困」の問題については、子どもの権利条約の第27条などの条文に基づき、明確に解決を目指すべきであると規定されています。そのため、締約国の一国たる日本もさまざまな改善策を講じてはいますが、未だ解決には至っていません。この条文については子どもの権利条約一覧のページで詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

「子どもの貧困率」は13.5%・7.4人に1人の子どもが貧困

「子どもの貧困率」について

「子どもの貧困率」は「相対的貧困率」というものがベースとなって算出されています。そして、「相対的貧困率」を簡単に説明すると「国内でどれほどの割合の人が『相対的貧困』の状態に陥っているか」ということを示しています。

「絶対的貧困」「相対的貧困」

ここで「相対的貧困」というものについて説明します。日本の「子どもの貧困」についての話題の場合の「貧困」という言葉の定義は往々にして、「絶対的貧困」ではなく、「相対的貧困」という状態を指しています。「絶対的貧困」とは毎日の日常生活に使う「着る服」や「食べる物」、「雨風のしのげる家」や「綺麗で安全に飲用できる水」、「しっかりとした医療体制」、「疫病がなく健康に過ごせる状態」、「読み書きができるような教育」、「持続可能な雇用」など人間が人生を送る上での最低限の生活に必要なものを持ち合わせておらず、日常の一日一日のその日の生活すらままならない状態を指しています。それに対して、「相対的貧困」はその人が住んでいる国の平均的で普通の生活水準と比較した際に所得がかなり低く、その国において平均的な生活を送ることが極めて難しい状態を指しています。

「絶対的貧困」と「相対的貧困」の違い

つまり、この2つを比較すると、前者は「生きるか、死ぬかの瀬戸際」の次元に問題の中心があるのに比べ、後者は「生死の問題」の次元は解決できているものの、その次の次元の「果たして安定した生活を送れるか」という部分に貧困の問題の中心が存在しているということです。

日本におけるこの問題の認知度

この「相対的貧困」に基づく日本の「子どもの貧困」の問題は、世界各国(特に発展途上国)で起きている「絶対的貧困」に基づく「子どもの貧困」の問題に比べて、社会全体の問題としてあまり表面化していないという重大な現状が存在しています。なぜなら、「相対的貧困」は「絶対的貧困」に比べて、上述のように「生きるか、死ぬかの瀬戸際」の次元の問題が解決されており、周囲から見たときに気づきづらく見過ごされやすいからです。

もし、この問題を放置し続けると…

この問題を放置し続けた場合には、さまざまな種類の二次被害的問題が起きるのではないかと考えられます。

例えば、子どもの教育という面に多大なる影響を及ぼす可能性があるのは想像に難くないことです。貧困状態に陥ってしまっている世帯の子どもたちは、平均的な収入の世帯の子どもに比べ、教育の機会を損なってしまっている可能性が大いにあります。例えば、塾や予備校といった進学の際に活用できて勉強を助けてくれるシステムにアクセスできないことは最終的に「学歴格差」につながる危険性をはらんでいます。(なお、この部分に関する詳しい説明は「教育格差」のページで述べているため、そちらも合わせてご参照ください。)他にも、平均的な収入の世帯の子どもが受けられる多くの面白く豊かで意味のある人生・社会経験を受けづらかったり、貧困ゆえに地域社会や交友関係からの孤立を招く恐れなどもあると考えられます。

貧困には学歴格差を生む危険性がある

こうした問題点は最終的には1つの結論へと帰結してしまうのではないかと危惧されます。それは「世代を超えた貧困の連鎖」です。この状況が恒常的に続き、常態化してしまうと、貧富の広がりが日に日に拡大していき、ついには経済の二極化、収入と富の分布の固定化をも招く危険性があるのではないかと考えます。

改善策

この問題に対する有効な改善策についてはさまざまな立場の人々から多角的に日々思案され続けています。しかしながら、まだ根本的な解決までの道のりは遠いものであるように見受けられます。ただ、長期的な視点で見ると少しずつ解決に向かえるのではないかという施策がいくつか考えられます。

予算の大胆な増額プランニング

育児関係の予算を増額することが有効な打開策であると考えます。これは最も簡単に考えられる解決策の1つと言っても過言ではないでしょう。前述のように「世代を超えた世帯の貧困の連鎖」が現在の「子どもの貧困」を生み出す一種の要因となっている可能性は大いに考えられます。それを断ち切るためには、例えば出産後に高額な育児給付金を得ることができ、それを育児に活用できるシステムや育児中だとさまざまな施設で割引を受けられるシステムなどが有効なのではないかなと思います。無論同時に、システムを悪用して、育児放棄のようなことをする人が出ないようにする法整備や罰則の取り決めをする必要があります。また、そもそも予算をどのように生み出すかという難題が付きまといますが、それに関しては予算の無駄をなくすことはもちろんの上、一度予算の内訳を現代の社会構造に合わせてブラッシュアップしつつ、見直すことも重要な視点なのではないかと推考します。

改善策として育児関係の予算増大がある

現状制度の拡充

現在日本で実際に行われている施策として、貧困に陥ってしまうケースの多いひとり親家庭や親に障がいのある世帯に対して児童扶養手当が給付されているほか、各種用途に活用できる生活資金の貸与制度があります。しかしながら、実際の「貧困」問題の現況から見てわかるように、それらはまだまだ「貧困」問題の抜本的・根本的解決には至っていません。ただ、すぐに対処できるという意味でこれらの制度を拡充するのもある種有効な策と言えるのではないでしょうか。もちろん、この方法ではおそらく一気に「貧困」問題が解決するわけではありませんが、少なくとも現状より問題の規模はいくらか小さくなるのではないかと思います。

地域社会の見直しという切り口

他の改善策としては、地域社会の繋がりを強くするという方法もあるのではないかと考えます。近年、日本社会は個人主義の影響などにより、地域社会の関わり合いという概念が疎まれ、希薄になっています。「貧困」(特に「相対的貧困」)という問題が現在の日本社会で意外にも軽視され、見過ごされやすい要因にはそれが関わっているのではないかと考察します。ゆえに、地域社会の繋がりやコミュニティといったものを再び深め、お互いがお互いのことをある程度知っている顔馴染みの関係になることが、「貧困」という状況をいち早く発見でき、改善に向けた道のりを地域社会全体で模索し、練っていくことができる一つの手段であると思います。これはある意味で間接的ではあるけども少しずつ問題を解決に向かわせることのできる有効な改善策とも言えるでしょう。

地域社会の関わり
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