第5条親の指導を尊重
締約国は、児童がこの条約において認められる権利を行使するに当たり、父母若しくは場合により地方の慣習により定められている大家族若しくは共同体の構成員、法定保護者又は児童について法的に責任を有する他の者がその児童の発達しつつある能力に適合する方法で適当な指示及び指導を与える責任、権利及び義務を尊重する。
本条は、この条約全体において認められている子どもの権利を子ども自身が行使する際に、親もしくは法定保護者が適切な指導や監督を行う責任、権利、そして義務を、条約の締約国たる国家が尊重すべきであるということを定めた条文です。
適当な指示及び指導を与える責任、権利及び義務
ここでの「適当な指示及び指導」の在り方には2つの重要なポイントがあります。
一つ目は、本条約全体により保障されている「子どもの権利」の行使を縛り付けたり押さえつけるようなものは「適当な指示及び指導」には一切あたらないということです。むしろそのような行為は条約全体も合わせて全面的に禁じられているようなことと言えます。二つ目は、「児童の発達しつつある能力に適合する方法で」という部分です。つまりは、子どもが決断する諸々の行動(子ども自身の能力の拡大や発達に基づくもの)を、親は認めるべきとされています。
すなわち、本条約の「子どもの権利」の定義の上で、この条文は、親の子どもに対する種々の権利は決して絶対性・神聖性を有さないこと、そして親の権利の行使の上で子どもの権利全般を損なわない健全な方向性を目指す必要があること、その2つの理念を定めた条文であると言えるでしょう。
この条に書かれている言葉の定義
条文中では、「父母」、「地方の慣習により定められている大家族若しくは共同体の構成員」、「法定保護者」、「児童について法的に責任を有する他の者」といったワードが登場しています。なお、日本においてはこの条のそれらの部分には、民法における「父・母」や「養親」、「親権者」、「親権を行う者」、「未成年後見人」、「未成年後見監督人」、「法定代理人」、「親族」があるほか、児童福祉法にある「児童福祉施設の長」、「里親」、「保護受託者」、そして、少年法に記述がある「保護者」などが該当するものとなります。なお、本条は本条約第16条・第18条などとも深い関連性を有していて、また本条の趣旨のもとに第14条二項では「子どもによる思想・良心・宗教の自由の行使」が規定されています。各条文の詳しい説明は該当ページをご参照ください。
民法
一個人と一個人の間で使うことのできる数多くの法律の総称。
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養親
養子の親を務めている人物。子どもの側から見ると生みの親ではなく育ての親である存在。
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親権者
未成年に対して教育や財産などの面倒を見る権利および義務をまとめて「親権」といい、「親権者」はそれを持っている者のこと。日本においては結婚している状態の両親が該当するほか、両者が離婚している場合には話し合いを通じた上で片方が担当することとなります。
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未成年後見人
「親権者」もしくは「親権を行う者」が死亡や子どもへの虐待などの何らかの理由で「親権」を失った場合に、その代行として代わりに彼らの役割を果たす人物のこと。
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未成年後見監督人
「未成年後見人」がしっかりと役割を果たせているかということを調査する、監視する役目を持っている人。「未成年後見人」がいる場合に必ずいるというわけではないですが、「未成年後見人」とその親権を受ける側である「子ども」が極端に対立している場合などに外部の人物が置かれる例が多いです。
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法定代理人
法律に基づいて特定の人物の代理の役割を務める人のこと。上記の「親権者」や「親権を行う者」、「未成年後見人」などといったものが該当する広い枠組みの意味を持つ言葉。
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親族
親戚たちのこと。血が繋がっている人たちの6親等以内、結婚によって家族になった人たちの3親等以内が含まれる。また、養子と養親の関係の場合も含まれる。
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児童福祉法
全ての子どもの「幸せ」を追求していくために作られた極めて広い範囲、大きさの法律。子ども達が楽しく健康に暮らしていくことができ、さらにしっかりと面倒を見てもらえる環境作りを目指しています。子どもが育つ中で、社会がやってはならない禁止行為なども書かれています。
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児童福祉施設の長
保育所や助産所、児童センターなどといったいわゆる児童福祉施設の管理や運営をする人。
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里親
養子制度に極めて似ている制度。親と離れて暮らす事情(虐待など)がある子どもを、血が繋がっていない「里親」という人が自らの家庭に迎え入れるというシステム。ただ、養子制度の「養親」が親権を持っているのに対し、「里親」は親権を持つことができない(実の親が持っている)という違いがあります。
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保護受託者
親と離れて暮らす必要があってかつ中学卒業以上の子どもを、自らの家庭に迎え入れるかもしくは通わせて面倒を見る人。
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少年法
犯罪を犯してしまった子どもをどのようにするかを決めた法律。服役した際の刑期の長さや実名報道の禁止などといった様々な規定が書かれている。
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保護者
子どもの面倒を見る人。血縁のある親かもしくはここで上述したような各種制度の人が当てはまります。
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