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取材④(児童虐待防止協会)

「児童虐待防止協会」は、子どもの虐待を防止するために設立された日本で初めての民間団体です。同協会の活動についてご担当の方に取材を行いました。児童虐待防止協会と、ご対応いただいたご担当の方に御礼申し上げます

児童虐待防止協会について

同団体は、関西テレビで制作されたドキュメント番組「密室の親子」の大きな反響をきっかけに沢山の人が集まり、関西テレビと大阪府の協力を得て、1990年3月に設立されました。協会のスタッフは基本的にボランティアであり、これまで虐待関連の支援現場に携わった専門職者(心理、福祉、保育・教育、医療・保健などの分野)が従事しています。支援者も含めたサポート体制を社会全体のつながりで構築していくことを目標に、電話を通した悩み相談だけでなく、高等学校での講演、地域の支援者をサポートする事業、行政からの委託事業など、様々な活動を行っています。

児童虐待の実態

まず、児童虐待が起こりやすい傾向として、貧困家庭(特にネグレクトとの関連)、保護者や家族に個人的責任を追及し、社会的な支援制度が少ない社会、女性・母親を軽視する社会(ジェンダー差別、ジェンダーギャップ問題がある社会)などがあると言います。つまり、様々な要因による孤立が児童虐待に繋がっているということです。

その児童虐待を多く発見するには、虐待の問題認識を子どもに関わる専門職者が身に付けること一般の方も目撃した時に通告を行うことが大切であり、これらのことが日本の社会で意識され始めてから、虐待の発見件数が増えてきました。しかし、児童虐待自体が発見されにくい種類が多く、子ども自身が否定したりするなど、子どもの権利を軽視する社会では、中度や軽度の虐待は発見されずらいと言います。そこで、社会全体が子どもや家族に対ししっかりアンテナを張り、そうして掴んだ支援が必要な家庭に対して支援を行うことが基本です。また、虐待は起こる前に防止することが最重要であり、誰もが子育てしやすい環境を整えることが必要です。取材担当者は、「当協会では、子ども自身が虐待とは何かを知り、自分自身が大切にされているかどうか、子どもの権利が保障されているかどうかを学ぶことが長期的に必要だと考え、子ども虐待予防教育を進めている。」と言います。

一人一人ができること

児童虐待の解決と聞くと、一人一人が日常レベルからできることは想像しづらいです。しかし「児童虐待」は大きな事件や深刻な虐待だけではなく、身近な家庭で、虐待をしてしまったかもしれないと思う親は案外多いものです。例えば、満員電車、バスで泣く幼児やベビーカーをのせることに対して周囲の視線が冷たく困る親や、泣く子どものことで近隣から非難されたり、地域によって子育てのしやすさに格差があると言われています。虐待を未然防止するためには、まず子育てをしている親に優しいまなざしを向け、子育てしやすい環境をつくることが大切です。中高生も、電車やバスで子ども連れの人に席をゆずる、ベビーカーをのせるのを手伝う、保育園などでボランティアしてみる、虐待について学ぶことが大切です。また、子どもに対する虐待だけでなく女性や高齢者、障がい者、あらゆる暴力的・差別的な価値観や文化にも疑問をもつことも大切です。加えて取材担当者は言います。「ただ、SNSなどで暴力に関して発信すると、多くの中傷非難を受けることもあるので、気を付けてください。残念ながら戦争をはじめ、暴力は美化されることもあるからです。さらに、虐待問題と密接に関連するDVへの理解、周りにデートDVの加害・被害がないかどうか、友人でいれば公的な窓口を教える等、支えてあげてください。」

将来親になる世代へ

取材担当者はこう語ります。「高校で、虐待予防授業を行ってきた協会としては、高校生には、近い将来の大人・社会人として、また、親になるかもしれない世代として、虐待というものが他人事ではなく、身近な社会問題であり、自分の子どもだけでなく、子どもを社会全体で育てていくという意識をもち、子育てしやすい社会をつくる担い手となってもらえることを期待しますし、私たち大人もその意識を忘れてはならないと思います。子育ては一人でできるもの、家庭内で完結するものではなく、社会の助け合いでするものです。そして、子育てに限らず、日頃から、私たちがお互いを助け合い、弱いところを補いあうことができるかどうか、他者に弱みを見せたり、助けを求められたりできるかどうかといった点もつながっているのだと思います。当協会のビジョン「育ちあい 認めあい 補いあって 子ども虐待を生み出さない社会」の実現と、ミッション「社会と子ども 家庭をつなぐ」にその思いを込めています。」

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